☆ 今年のラグビーは面白い ☆

井出薫

 昨年のラグビーは、社会人は東芝、大学は早稲田がフォワードを中心に圧倒的な力を誇り、日本選手権で早稲田がトヨタに勝利した試合と、同決勝で東芝とNECが引分けた試合以外は、白熱した試合の乏しい盛り上がりに欠けるシーズンだったが、今年のラグビーは面白い。

 社会人は、名門神戸製鋼とサントリーが復活し、各チームの東芝対策、特にモール対策が進歩して東芝がフォワードで圧倒する局面が減り、トップリーグでは接戦が続いている。東芝、サントリー、ヤマハ、トヨタ、神戸製鋼、NEC、この6チームはほぼ横一線と言ってよいだろう。

 大学は、早稲田が、指導者が交代し、フォワードの主力が抜けたこともあり、昨年より大きく力が落ちた。今期の早稲田の試合を観ていると学生スポーツで如何に指導者の存在が大きいかが分かる。(中竹新監督を批判しているのではない。清宮前監督が強くて速いフォワード作りを前面に出しチーム強化に成功したのに対して、中竹氏は早稲田伝統のバックス中心のチーム作りを目指している。それが、いまの時点では選手に戸惑いを生じさせ戦力ダウンに繋がっている。中竹氏の真価が問われるのはバックスの主力が抜ける来年度以降だ。)

 明治と慶応が低迷期を脱して力をつけてきた。両チームとも今年度大学日本一は難しいかもしれないが、来年度以降は大学日本一の座に必ず絡んでくると予想する。関東学院は、リーグ戦最終戦で法政に不覚を取ったものの、大学選手権決勝で早稲田に完敗した昨年のチームよりも確実に戦力アップしている。フォワード第1列に山村、山本、バックスに霜村、水野、有賀という(当時並び現在の)日本代表選手を揃え圧倒的な力を誇った2003年度のチームには及ばないものの大学日本一に一番近いところにいる。他にも、シーズン当初は不振だったが関東学院に一矢を報いた法政、確実に力をつけてきている東海、関西では同志社の不振が寂しいが、大体大が面白い存在となっている。今年度の大学日本一は3年ぶりに関東学院と予想するが、昨年度と異なり番狂わせは起こりうるし、接戦になる試合が多くなることは間違いない。

 このように今年のラグビーは面白い。ところが競技場は空席が目立つ。いや空席が目立つどころか観客がいないに等しい試合が多い。サッカー人気で客を奪われたと協会は嘆いているが、12月初頭にJリーグが終了するサッカーと、12月からが本番のラグビーでは、シーズンにずれがあるから、サッカー人気で観客を奪われたというのは理由にならない。

 要するに営業不足なのだ。競技場で試合を観るまではラグビーには全く興味がなかったが、いちど観戦して虜になったと言う人は少なくない。確かにサッカーやバレーボールに較べるとルールが複雑で、初心者には分かりにくい。オリンピック競技ではないこと、日本のレベルが世界に遠く及ばないことも人気が盛り上がらない理由となっている。しかし身体がぶつかりあうその迫力は他の球技を遥かに凌ぐ。人々にアピールする要素は十分にある。世界のトップクラスには及ばないもののトップリーグのレベルも着実に進歩している。人気向上策は幾らでもあるはずだ。はやくプロ化も含めて抜本的な対策を講じて、ラグビーという素晴らしいスポーツを人々に伝えることが日本ラグビーフットボール協会の責務だ。

(H18/12/23記)


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