☆ 人気投票をしている場合ではない ☆

井出薫

 景気が上向き、自公政権が揺ぎない地位を築き上げた現在、一時期日本国内に溢れていた危機感は政財官どこからも消え去ってしまったようだ。

 新庄を来年の参議院選挙に担ぎ出そうと、自民と民主が画策していると報じられている。新庄がおいそれと乗るとは思えないが、立候補すれば当選確実で、来年の今頃は国会に初登院する新庄の姿をテレビで観ることになるかもしれない。しかし、一体新庄を議員にして何をさせる気なのか。おそらく何も考えていない。要は票集めの道具に過ぎない。無責任な話しだ。

 確かに景気は上向き人々の懐具合は一時期よりは良くなっている。しかし、少子高齢化は勢いを増すばかりで解消のめどは立っていないし、年金問題解決の道筋も一向に見えてこない。頼みの綱である企業の業績好調もいつまで続くか分かったものではない。韓国、中国、インドなどアジア諸国の急速な経済発展で、日本企業の国際競争力は長期的に見れば必ず低下する。要するに、抜本的な対策をいま打っておかないといつか必ず後悔することになるのだ。

 今月末には安部政権が誕生する。安部氏は自ら戦う政治家などと公言しているが、北朝鮮拉致問題で毅然とした態度を示したということ以外にこれと言った実績はなく、しっかりした政策があるとも思えない。北朝鮮問題での対応と日本の政治家としては若く誠実な感じがするその人柄が受けているだけだろう。良くも悪くも小泉首相のような闘争力があるとは思えず、永田町近辺では早くも、小泉退陣、安部政権誕生で官僚主導政治が復活すると囁かれている。

 いずれにしろ、十分に機能しているかどうか疑問だとは言え日本は一応民主国家だ。最終的な決定権は国民の手にある。人気投票をしている場合ではないことをよく考えて行動しなくてはならない。野球選手の新庄は大好きだが、政治家のセンスがあるとは思えない。彼が参院選に立候補しても、明確なビジョンを示すことができないときには、断固落選させるべきだ。

(H18/9/16記)


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