☆ 必要ない第三セクタ ☆

井出薫

 臨海副都心の足である「ゆりかもめ」が、車両事故(車輪脱落)で14日(金)の夕刻から土日の丸二日間運休した。事故発生当初、株式会社ゆりかもめは「予想できない事故だった」と発表したが、国土交通省の調べでは同じような事故が昨年もあり、各社とも精密点検を実施したが、ゆりかもめは業者による目視点検しかしていなかった。お粗末もいいところだ。幸いにしてけが人がでなかったからよかったものの、一つ間違えば大事故になっていたかもしれない。

 臨海副都心開発のような行政の肝煎りで始めたプロジェクトでは、自治体が中心になった第三セクタ(通称「三セク」)を設立することが多く、株式会社ゆりかもめもその一つだ。社長は都庁OBで、実際の経営権は都が握っている。社長や都からの出向者は実務経験に乏しく、しかもお役所ルールで必ず最長でも二年で異動してしまう。だから、実務は民間からの出向者や転職者に頼っているのが実情だが、十分な人材が集まっていることはまずない。それはそうだろう。民間企業とすれば自社の利益と関係のない三セクに優秀な人材を出向させるはずもなく、人事ローテーションの一環として一時的に出向させるか、転籍先として利用しているに過ぎない。しかも(ゆりかもめは比較的財政状況がよいのだが)たいていの三セクは巨大な債務超過状態に陥っている。それにも拘わらず「債務超過になるような事業だからこそ三セクで遣っているのだ」と開き直り、抜本的な対策を取ろうとしない。そして高い料金を取り続けている。

 臨海副都心だけではなく日本全国、三セクの実情はどこでも同じようなものだろう。無責任な経営、低い技術水準、高い利用料金、三セクに相応しい三点セットというわけだ。

 三セクなど本当に必要なのだろうか。確かに資本と人材に乏しい地方では、三セクで遣る以外ない事業もあろう。だが東京のような人も資本も技術も充実している場所で、わざわざそのためだけに設立した三セクが運営する交通手段が必要だったとは思えない。そんなものが本当に必要だったと言うならば、それは開発プロジェクト自体が実は不要だったことを意味する。

 行政の責任上、何千億円という膨大な債務を抱えている臨海三セクなどは簡単に放り出すことはできない。債務超過でも顧客はいるから、おいそれと事業を中止することもできない。だから整理事業のような形で細々と経営していくしかないという場合も勿論あるだろう。だが社会のニーズと合致していない破綻した事業は、銀行に債権放棄を求めるなり、民間に売却するなりして早く解消し、そこに注ぎ込まれている資金を別の用途に振り向けることが行政の責務だ。既得権益や過去のしがらみをさっさと捨てて、早く実行に移してもらいたい。

(H18/4/17記)


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