☆ 銀行も変わって欲しい ☆

井出薫

 IT関連業界は時代の最先端などと持て囃されているが、ベンダー、プロバイダー、通信事業者と、どこもかしこも激烈な競争が繰り広げられており押しなべて経営は苦しい。日の出の勢いだと思われているソフトバンクだって、数年後には「ボーダフォンを買収したのが命取りだった」と言われているかもしれない。

 それに較べると銀行は安泰だ。大量の不良債権を抱えると国が公的資金を投入して救済してくれる。公的資金投入だけでは足りないとなると、ゼロ金利、さらには量的緩和などと至れり尽くせりのサービスが与えられる。そのくせ、景気がよくなり1兆円もの利益を上げているのに、預金金利の引き上げすらしてくれない。しかも窓口は3時で閉まってしまうし、土曜日に通常の窓口業務をしている店舗はほとんどない。遅くまで窓口が開いている店舗や土曜営業の有人店舗がたまにあっても、扱う業務が限られていて役立たない。テレビバンクなどというテレビ電話を使うサービスもあるが、どうも気色が悪くて使う気にならない。お役所や郵便局よりもずっとサービスが悪いではないか。

 市場経済では貨幣は血液であり、銀行は心臓に相当する極めて重要な役割を果たしている。だからある程度優遇されるのは当然だろう。しかし、それにしても少し甘すぎるのではないか。

 医者は人の命を預かり、仕事はきつく、しかも患者から病気が感染するリスクも負っている。だから一般国民より高い収入を得て、地位と名誉が与えられていても私たちは文句を言わない。銀行も銀行員も同じような存在かもしれない。とは言え、医者が一日の診療時間3時間で週休3日、しかも年収は3億円以上などという待遇を受けていたら、さすがに人々は非難するだろう。無知な小市民の僻みかもしれないが、今の日本の銀行はこういう待遇を受けているように思えてならない。

 そもそも、合併統合で数が減ったとは言え依然としてたくさんの銀行が残っているが、こんなに銀行が必要なのだろうか。いざと言うときには政府や日銀が資金を注ぎ込み救済するのならば、銀行は全て国営化して日銀に統合すればよい。その方が全体のコストが圧縮されて効率のよい運営ができるはずだ。統合された暁には日本銀行を幾つかの本部・支部に分け、各本部・支部の資金状況と経営状況、その他各種情報を事細かにリアルタイムで一般公開すれば極めて透明性の高い金融システムが誕生して、独占の弊害も生じないのではないか。たとえば、国家戦略本部(現日銀の業務継承)、国内金融市場本部、国際金融市場本部、新規事業本部、こんな風に本部分けし、さらに各本部を地域と業務ごとに適切に支部に分割する、こうなふうにしたらどうだろう。

 もちろん、こんな考えは金融のきの字も知らないど素人の戯れ言に過ぎない。中央銀行に自分の財産を一元的に管理されることを危惧する人もたくさんいるだろう。現在の金融制度は長い歴史の中で培われた優れたものなのだろうから、筆者のような素人にまともな提言も評論もできるはずはない。

 だからと言って、銀行は今のままで良いということにはならないはずだ。合併や不良債権処理で財務状況を改善するだけではなく、組織のあり方、サービスのあり方など様々な分野で積極的な改革が必要だ。

 せめて午前中だけでもよいから土曜日も普通に営業することくらいできないのか。銀行の有人店舗が勤め先のそばにない会社員は窓口に行く暇がなく、上司や同僚に嫌みを言われながらわざわざ年次休暇を取得して銀行に行くことだってある。銀行の方々にはそういうことも少しは考えてもらい改革の努力をしていただきたい。

(H18/3/10記)


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