☆ そろそろ変わってくれ共産党 ☆

井出薫

 日曜討論会で志位共産党委員長の発言を久方ぶりに聞いた。印象は「変わらないなあ」の一言に尽きる。共産党の言っていることは、小泉さんと同じくらい明快だ。だが、小泉さんのように国民から支持されない。どうしてなのか。

 「大企業や大金持ちから税金をがっぽり集め、自衛隊を縮小ないしは廃止して、そこで浮いたお金で国民福祉を充実させる。」これが共産党の経済政策だ。−社民党もほぼ同じだと言ってよい。−実に素晴らしい政策だ。これが国民の圧倒的な支持を得ることができないとは全く不思議だ。ただし、この政策が現実的に有効であればの話しだが。

 グローバルな市場経済で動いている現代の世界で、企業や金持ちへの安易な増税は、資本の日本市場からの逃避を不可避的に引き起こすことになる。そんなことをしたら、共産主義国家中国が日本から逃避した資本の受け皿となり益々大発展を遂げ、その一方で日本は経済低迷にあえぎ、いくら企業から税金を搾り取っても国民福祉に回す資金が捻出できなくなる。共産党の経済政策では日本は良くならない。精々、文化大革命当時の中国のように国民全員が同じような服を着て、同じような家に住み、平等に貧乏な生活ができるだけだろう。だが今の日本人でそんな暮らしを望む者はいない。

 戦後61年、文化大革命終結から30年、ベルリンの壁崩壊から17年、時代は大きく変わった。理想の共産主義が今すぐ実現できない以上、現実のグローバルな市場経済の中で日本国民の生活を維持向上させていくこと、これが思想の左右を問わず政治家の仕事だ。理念として共産主義や宗教的理想を掲げることは一向に構わないが、内乱状態にあるわけでもない今の日本で非現実的な政策を掲げても国民の支持は得られない。事実、党員の高齢化など共産党の長期低落傾向に歯止めがかからない現実が、国民が共産党の政策が非現実的と考えていることを明かしている。そもそも、資本主義ではないということ以外、理想の共産主義社会なるものがどんな社会であるかを知る人は誰もいない。共産党はまず現実を見るべきだ。

 志位さんは筆者と同学年、戦後生まれの人間だ。いつまでも伝統的な日本共産党の看板に拘る必要はないだろう。党名を変えろとまでは言わないが、今こそ基本思想と運動方針、党運営の抜本的な改革を断行するべきときだ。そして、過去の紛争と決別して、国民の目から見るとほとんど政策の違いが分からない社民党との合同も視野に入れて政界再編も進める必要がある。

 確かに民主党に合流した旧社会党右派勢力がその典型だったように、現実的な路線に舵を切った瞬間に保守に飲み込まれてしまう危険性がないわけではない。しかし、共産党には護憲という絶対に譲れない、そして譲るべきではない信念があり、自民党など保守勢力とは明確に一線を画することができるはずだ。

 憲法を守るためにも、共産党には一日も早く現実を見据えて現実的な政策を立案して国民に示すことができる政党へと脱皮してもらいたい。勿論そのためには現在の中央集権的な党運営を抜本的に改め、日本と世界を善くしようとする社会の様々な層の人々が自由に党の活動に参加できるようにし、開かれた議論の中で政策や運動方針が決定されるような体制を作り上げることが不可欠だ。

(H18/1/8記)


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