☆ 全頭検査見直しに異議あり ☆

井出薫

 BSEの検査対象から若い牛を除外するという議論が進んでいる。内閣府の食品安全委員会は最終結論を先延ばししたが、結論は見えている。後は「若い牛」の線引きをどこにするのかという問題が残っているだけだ。

 若い牛を検査対象から除外するのは、BSEの原因である異常プリオンの増殖が遅く、若い牛は検査をしても感染を検出できないからだという。だが、それは、検査をしなくても安全だということではなく、検査してもリスクは減らないということを意味している。つまり、検査をしなくても安全なのではなく、検査をしても危険性が減らないということなのだ。

 こういう場合、本来は、検査を止めるのではなく、より精確な検査方法を開発することが求められるはずだ。しかも、若い牛の検査が本当に無意味なのか、疑問が残る。異常プリオンの増殖メカニズムは良く分かっていない。だから、急速に増殖が進み、若い牛でも現在の検査方法で感染が検出されることもあるのではないだろうか。

 どんな食品でも危険性はゼロではない。100%絶対に安全でなければ食べないというのでは、食べるものがなくなると言う人もいる。確かに、それは事実だろう。しかし、プリオン病は細菌やウィルス、原生生物などの感染による病とは異なり、未だにその原因やメカニズムがはっきりしていない病気だ。当然のことながら、現時点では予防法も治療法もない。だから、用心に用心を重ねても、しすぎるということはない。欧米では若い牛、通常30ヶ月未満の牛は検査対象外だ。しかし、日本がそれに合わせなくてはならない理由はない。

 アメリカや国内の業者から、米国牛輸入再開を求める声は強い。だが、それに配慮して、十分な科学的な検討と国民への十分な説明がないまま、拙速に全頭検査を廃止することには賛成できない。まず、より確実な検査方法を開発することが求められる。

(H16/7/18記)


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