☆ ほどよい温度に ☆

井出薫

 気象庁の試算によると、今のまま温暖化が進むと、2100年には関東地方の夏は九州南部並みの暑さになるそうだ。

 1997年12月に合意された京都議定書は、アメリカの反対で、未だに発効していない。ロシアが批准すれば発効するが、世界の二酸化炭素排出量の4分の1を占めるアメリカが参加しない協定に効果があるのか疑問だ。
 世界人口の3分の1を占める中国とインドに何も規制がないことも、いずれ大きな問題となろう。

 二酸化炭素など温室効果ガスの排出量が増えるとどのような影響があるか、実はよく分かっていない。温暖化すると、海洋の植物プランクトンの光合成が活発化して二酸化炭素の吸収量が増える。だから、二酸化炭素排出量が増加しても大して影響はないと楽観的に考えている人もいる。温暖化は農業生産力の向上をもたらすからマイナス面ばかりではないと言われることもある。

 とは言え、地球の歴史をみても、ここ数十年の大気中の二酸化炭素濃度増加は異常だ。その主要な原因が、経済活動に伴う二酸化炭素排出量の増大にあることはほぼ間違いない。
 一度破壊された自然環境を元に戻すことは極めて困難だ。だから、影響が未知数だとしても、温室効果ガスの排出規制は進めなくてはならない。

 アジア地域の経済大国日本のなすべき役割は大きい。削減目標の6%を達成するだけでは不十分だ。現状のまま推移すると、20世紀半ばには、アジアは世界最大の温室効果ガス発生源になる。今から、自然環境と経済発展の調和を図っていかなくてはならない。そのためには、資金と技術がある日本がリーダーシップを取り、自然と調和した経済発展のモデルを提示して、必要な技術開発を進めることが大切だ。

(H16/6/8記)


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