井出薫
ファイル共有ソフトWinnyの開発者が著作権違反幇助容疑で5月10日京都府警に逮捕された。掲示板などでの一連の発言が著作権違反幇助の証拠とされ逮捕に至ったようだ。取調べでも容疑者は「体制を崩壊させるには、著作権侵害を蔓延させるしかない」と陳述していると報じられている(ZAKZAK5/11)。これでは逮捕も致し方ないかもしれない。 しかし、Winny開発者の主張はいささか極端だとしても、インターネット時代の今、旧来の実物販売の時代に制定された著作権の発想が時代遅れだという主張は一理ある。 利用者が著作物購入で支払う対価には、著作物製作に関わる直接経費の他に、多額の流通経費や広告宣伝費などが含まれている。また、欲しいと思う著作物が在庫切れで入手できないことは珍しくない。インターネットとPCが普及する前であれば、それも致し方ないことだったが、今は違う。 インターネットによるダウンロード販売を積極的に推進すれば、流通や広告宣伝の経費が大幅に削減され、消費者が今よりずっと安く確実に著作物を入手することができるようになる。だが、現在の業界の構造がそれを阻んでいる。 正確に言えば、これは著作権の問題ではないだろう。だが、著作権が既得権益を得ている者たちの錦の御旗になっている。Winny開発者もそのことが言いたかったのだろう。 コスト削減の努力もせず、高い商品を利用者に押し付け、それをネットで共有する者が現れると著作権を盾に取締りを求める。その背後では関連団体に膨大な利益が流れ込んでいると噂されている。こういう著作物流通の仕組みを改革することなしに取締りだけを強化すれば、文化の健全な発展を阻害することは明らかだ。そして、違法コピーとその流通はなくならない。自分の行動は正しいと信じる確信犯は後を絶たず、それを支持する者もいなくならない。テロがなくならないのと同じだ。 著作権保護を声高に叫ぶだけではなく、インターネット時代の著作物流通の在り方が真剣に議論され、業界の構造改革がなされることを強く希望したい。 |