☆ 全頭検査は必須だ ☆

井出薫

 BSE(牛海綿状脳症)が発見され米国産牛肉が禁輸になっている。アメリカは再開を要請しているが、全頭検査を実施しない限り絶対認めるべきではない。

 BSEはプリオン病の一種だ。人ではクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)がプリオン病で、BSE感染で引き起こされるのが変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)だ。CJDは発症して数ヶ月で完全な痴呆状態になり2年以内に死亡する。治療法はない。

 プリオンはタンパク質の一つで、ウィルスやバクテリアのように遺伝子を持たない。プリオンが発見されてから20年以上経過するが、その正体は依然として謎に包まれている。
 「科学的に安全性が確認されている」などと言って、全頭検査の要求を過剰反応だと言う人がいるが間違いだ。BSEの正体は解明されていない。用心しても用心しすぎるということはない。

 BSEは感染によって発症するが、人のCJDは感染病ではない。未知の原因で、正常なプリオンが感染性プリオンに変異して発症する。プリオンは正常な状態では生命維持に必須の存在だが、何らかの原因で変異すると生命を破壊する。人間で感染に拠らずプリオン病が発生するのだから、牛でも同じことがありえる。外から感染しなくてもBSEを発病する牛がいるはずだ。だから、全頭検査は欠かせない。

 骨格筋にはプリオンが蓄積されることはないから、BSEを発病した牛でも、骨格筋なら食べても大丈夫だと言われる。しかし、今のところ感染が確認されていないだけだ。感染性プリオンは熱に強く100度の熱湯にも耐えられる。タンパク質分解酵素でも分解されない。どこで汚染されるか分からないのだから、BSEの牛はどの部位であろうと食べてはならない。

 イギリスでの発病者数の推移から、BSEの人への感染率は低いと予測する向きもあるが、潜伏期間の長さを考えると現時点で感染率を判断することはできない。

 いずれにしろ相手は未知の病原体だ。業界やアメリカからの圧力で妥協することは絶対に許されない。

(H16/1/14記)


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