☆ 小久保事件の衝撃 ☆

森有人

 阪神・ダイエーの日本選手権の興奮から覚めやらぬ頃、ダイエーの主力打者、小久保選手の読売への無償譲渡という衝撃の知らせが全国野球ファンの間を駆け巡った。「内弁慶シリーズ」と称された今回の日本選手権では、両チームとも熱烈な地元ファンの声援を背に、鉄腕強打を競い本拠地球場を疾駆した。球場と一体のその姿は、野球ファンならずとも多くの感動を誘い、「プロ野球の将来の姿が見えてきた」と、明るい予感を抱いた向きも少なくない。が、しかし・・・。

 予兆とはつまり、全国ネットを持つ企業集団の広告宣伝の手段としての日本プロ野球ではなく、米国並みの地域フランチャイズ型への転換だ。そうした兆しは、どうも淡い期待に終わりそうな気配だ。小久保事件で地域性の芽は一挙にすぼみ、逆に目いっぱいに企業特有の算盤勘定が表に出てきた。

 プロ野球の戦後復興期と異なり、全国的企業が球団を所有し、宣伝効果を引き出すことの意味と時代背景は、変わってきた。王、長島を要する読売のチケットを配布しながら新聞の部数増を図るという時代でもなかろう。実際に、Yomiuriほか、企業名の書かれたユニフォームを見ると、食前に下剤を飲むような具合の悪さを覚える。企業の資金力の豊富さとチーム力の間の相関関係が明らかになるほど、野球への興味も薄れる。まして、公正・中立という理想を建前として掲げるメディアが、球団を保有しながらスポーツ情報を報道する現状を思うとなおさらだ。

 食肉偽装問題で社会的信認を傷つけた日本ハムもそうだ。移転後も、往生際悪く球団名に「北海ハムファイターズ」と「ハム」に固執する。もちろん「読売ファン=北海道民」の構図がこれで一変し、地域密着球団の誕生を願って止まないが、この際、身売り後?の「九州?福岡?ホークス」に、プロ野球変革の時を期待したい。ちなみに筆者は、阪神ファンではない。「タイガースファン」である。「ヤクルト好きは、東京をフランチャイズにしてるから。読売に地域性はない」という他の筆者もこの際、まあ良しとしよう。

(H15/11/7記)


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