☆ 日米野球考 ☆


 今年11月に行われた大リーグ選抜と日本選抜の試合では、日本選手での活躍が目立った。タイトルホルダーで固められた日本選抜は、技術面ばかりでなく、体力面でも精神面でも見劣りしなかった。ホームランを打ちながら、内野ゴロでは、一塁にヘッドスライディングした小久保選手。大リーグの高めの速球を次々打ち返し、力量を見せつけたと同時にセンターフライで一塁から二塁にタッチアップで走った小笠原選手。皮肉なことに公式戦以上に真剣で、溌剌とした動きを見せていた。両松井、中村、今岡、福留などもグランドで輝いてみえた。スーパースター松井が抜けても日本のブロ野球はそれほど心配することもないと感じさせた。

 このように日本選手が輝いて見えたのには、いくつかの理由があるだろう。第一に、大リーグ選手たちが、凡ゴロであろうと常に全力疾走をするなど、真のプロの姿勢を見せつけたと同時に、野球自体を楽しんでいたこと。第二に、観衆も勝負だけに拘らず、いいプレーを楽しむ層が集まっていたこと。鳴り物入りの応援でなく、野球を観戦するために集まっていたため、選手も手抜きのプレーはできなかった。

 日本の選手の力は明らかに向上した。にもかかわらず、日本のプロ野球の前途に暗雲が立ち込めていると言われている。日米シリーズを見て感じたのは、これは選手のせいというより、相変わらず巨人というブランドに頼っているメディアとプロ野球経営者の怠慢と、それに満足している野球ファンの問題なのではないかと思われてくる。言ってみれば、読売ブランドと、プレーの内容ではなく勝敗だけに拘る傾向が、日本のプロ野球をつまらなくしているのだ。日本経済は確かに低迷しているが、日本の野球選手の力量は上がっている。日本のプロ野球は、将来を心配する必要はないだろう。もしだめにするとしたら、それは、既得権を守ろうとするプロ野球経営者、安易に巨人に頼るマスコミ、勝負だけにこだわるファンの責任ということだ。

 翻って見ると、日本の社会全体に元気がないのも同じことが言えるのかもしれない。既得権を守るのに汲々している政治家、経営者、労働団体幹部。やたらに不安を煽ると同時に情動に訴えるマスコミの体質、損得計算だけで現状を改善しようとしない国民。原点を忘れた発想こそが、日本の低迷を長引かせているのではないか。日米野球でのように、小久保や小笠原のような一流選手が公式戦で全力のプレーを繰り返せば、チーム全体の力が変わってくるだろう。その結果パリーグも観衆を集まることもできるのではないか。それは日本の社会にも言える。今回の日米シリーズは、多くのことを教えてくれたように見える。ようは、原点を忘れず、楽しんで責任を果たすという姿勢にある。

 ファンや選手会が要望しているセ・パ交流戦を既得権を盾にがんとして応じないセリーグ各球団のオーナーや、バリークの好試合より巨人軍選手のゴシップネタを優先するマスコミ隠しは、低迷する日本社会の象徴といっていいだろう。

(H14/11記)


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