かつてe-JAPAN戦略会議なるものが花々しくスタートした。繁栄する米国経済と低迷する日本経済を比較し、日米の景気格差の原因を情報化の遅れととらえ進められた施策だった。IT革命、IT事業を中心に530万人の雇用創出などの言葉が、声だかに語られた。平成13年度の『情報通信白書』では、通信ルネッサンスの到来と謳われた。確かに、通信料金は、大幅に引き下げられ、ブロードバンド利用者は急速に増加した。だが景気低迷は続き、失業率は、依然高止まりである。通信会社は、息も絶え絶えと行った状況である。到底ルネッサンスを迎えているとは思えない状況である。 今年の4月、みずほ銀行は、データ-ベースの統合に失敗し、社会に多大な影響を与えた。経営者たちが、顧客データ-ベースを顧客サービスの命運を担うものという認識をせず、単なる各行間の主導権争いと捉えたところに根本的な問題があった。つまり銀行首脳には、マネジメントをする能力がなかったということである。どのようなサービスをお客さまにするべきかということが分かっていなかったのである。 情報とは、企業経営者にとって、企業と顧客との接点で、何をするべきかというデータであり、望ましい施策をとるための選択にあたっての最も重要の要素なのである。その目的を忘れ、インフラを整備しても効果はあげられない。必要なのは、企業経営のためにどのようなITシステムを構築するかの仕様書であって、ハードではない。この点をわきまえれば、ITの導入により、経費の削減と顧客満足度の向上は達成される。その意味でIT革命という言葉は、間違ってはいない。だがそれだけでは、雇用創出は行えない。 真のIT革命のために必要なのは、情報とは何を意味しているかを的確に把握し、既存組織の大幅な改革と当事者能力を失った経営者の引退、労働時間の短縮やセーフティネットの整備による新たな労働形態の創出や生活向上に結びつく産業の育成にあるということだ。生産性の向上による成果の配分が必要であり、そのために情報が重要な要素となった時代、それが情報化時代ということではないか。e-JAPAN戦略は、初めインフラありきであり、故郷創生資金や道路施策の愚を繰り返しているような気がしてならない。新たな利権構造だけが残らないよう、利用者側からの働きかけが重要となるだろう。 |