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AIの進歩と普及は目覚ましい。脅威に感じる者も多い。AIの何が問題なのだろうか。 職を失うと心配する者がいる。大量失業の時代が来ると予言する者もいる。これは明らかに間違いだ。市場経済は豊かな消費者がいることで繁栄する。大量の失業者が生まれたら市場経済は崩壊する。むしろAIの普及で労働時間短縮の動きが進むと歓迎してよい。ただし職種の転換は不可避だ。オフィスワーカーの多くは経営者にならない限り現場の労働者になる覚悟と準備が必要になる。ロボットの進歩はまだまだで、現場労働者の仕事の多くは人が遣らなくてはならない。建設現場の作業員、調理師、美容師・理容師、介護士、保育士など現場労働者の仕事がロボットに置き換わる時代は遠い先のことになる。他にもAIの普及で廃れる職業はあるだろう。しかし、それはAIに限った話ではなく、これまでにも技術の進歩と共に廃れた職業はたくさんある。 AIが人間を支配する時代が来ると陰鬱な予言をする者がいる。しかし、これは現実とSFとを混同している。人間は貪欲で異常なほど富と権力と名声を欲し他人を管理支配しようとする。それは人間が生命体であることに起因する。生命体は様々な特徴を有するが、自己保存と成長はその中でも顕著な存在で無生物との著しい対照をなす。自己保存と成長のために、知的能力を発展させた人間は文明を築き支配のヒエラルキーを形成し地球上の生物界と無生物界を管理支配しようとしてきた。自己保存は他者の管理と排除、成長は他者の支配を要請する。死という限界があるために却って時にはそれが苛烈なものとなる。一方、AIには自己保存も成長もない。人間が電源を切ったり、システムを停止状態にしたりすればAIは機能しなくなる。AIはデータを収集し賢くなることはできるが、それは倉庫にたくさんの品物を保管するのと同じで成長ではない。自己保存も成長もないAIには人間や自然界を管理支配する意味がない。ただ、人間が他者や自然を管理支配するためにAIを利用することは十分考えられる。怖いのはAIではなく、あくまでも人間なのだ。 しかし、AIが引き起こすと懸念される深刻な問題が二つある。一つはAI依存症が増えることだ。多くの学生が課題の解答にAIを使っている。AIの機能向上で、AIの文章を丸写しする者も増えている。学生はたとえ不出来でも自分で真剣に考え、調べ、学友や教師と議論をして答えを出すことで学力が向上する。最初は不合格でも、この過程を継続すれば学力は向上し自力で合格できる。それは学生に限らずすべての人間に当て嵌まる。だが努力を怠りAIに依存し続けると人間の知的能力は衰え人間自身の選択でAIに人間の管理支配を任せるという事態も起こりうる。 もう一つの問題はフェイクが限りなく増殖することだ。今でも実在する人物たとえば著名な政治家や日銀総裁、俳優などが登場するフェイク動画が多数ネットに流通している。多くの動画は観ていればすぐにフェイクと気付くが、見分けが付きにくいものもある。知恵袋などネット上の相談サイトにフェイク動画を巡って「これは本当ですか?」と質問する者が少なくない。今のフェイクは慎重に考えればフェイクだと見抜くことができるが、AIが進歩すると見抜くのが困難になることも予想される。そうなると、何が真実で虚偽かが不明確になり由々しき事態となる。 AIを過剰に恐れる必要はない。しかし社会の状況を見極めながら慎重にAIの開発と利用を進めることが望まれる。 了
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