石破首相は、立憲民主党が求める企業団体献金禁止に、「憲法21条の表現の自由に抵触する」と反論した。さすが理論派、勉強家の石破首相らしい答弁だと言いたいところだが、この考えには同意しがたい。 企業団体も法的主体となりえるから、表現の自由は認められる。企業団体が活動の広報をしたり広告宣伝したりするだけではなく、特定政党や議員、特定の政治思想への支持を表明することも容認される。自由経済の維持発展を目指す企業経営者団体が自民党を支持し左翼的な野党を批判することも理解できる。しかし、献金の自由まで表現の自由に含まれるのかというと疑問と言わざるを得ない。生活に忙しい個人が支持政党にできることは献金くらいかもしれない。だが、企業団体ともなれば、政党や議員への支持の表現として、献金ではなく、選挙活動の手助け、政策や実績の周知、企業団体の構成員や市民の声を収集して政策提言をする、など様々な方法がある。献金を禁止したくらいで違憲になるとは思えない。もし、首相の主張が妥当な憲法解釈だと憲法学者が言うのであれば、学者たちには再考を求めたい。 一方、立憲民主党の提案もパフォーマンスに過ぎないように思える。民主党政権時代、民主党は政権発足当初、企業団体献金を受け取らないと表明した。しかし一年後には受け取りを再開している。また、立憲民主党案には「特定の政治団体を除いて」という抜け穴がある。また現実問題として、25万人のマルクス主義者の党員を有し、100万部とも言われる政党機関紙としては最大の発行部数を誇る赤旗を発行するなど党内で政治資金を調達できる日本共産党と、信者数800万の創価学会の支援が得られる公明党を除いて、企業団体献金を全面禁止して政治活動をやっていける政党があるのだろうか。下手をすると、金持ち以外は議員になれないということになりかねない。 政治資金の流れを徹底的に透明化し第三者が評価できるようにし、同時に贈収賄に繋がる恐れがある献金や政治を歪めかねない献金を禁止することが現実的だと考える。いずれにしろ、屁理屈やパフォーマンスではなく実りのある議論を期待したい。 了
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