人口減少が日本の未来に暗い影を投げ掛けていると言われる。日本だけではなく世界人口も将来ピークを迎えその後は減少すると予測する者がいる。そして人口減少を人類の危機と捉える者が少なくない。だが、人口減少は悪いことなのだろうか。戦争や疫病で人口が減少することは避けなくてはならない。しかし緩やかに減少していく分には増えすぎた人口が適切な水準に戻る過程だと考えることもできる。 1900年、世界人口は16億5千万人だった。それが半世紀後は25億人まで増え、2000年には60億人を超えた。そして今では80億人を超えている。増加率は下がっており,それがいずれ人口はピークを迎え減少に向かうという予測の根拠になっている。だが、それは聊か疑わしい。少子化対策は多くの先進国で国家的課題とされ様々な施策が推進されている。途上国では経済発展、衛生環境の改善などで人口は急増している。先進各国の少子化対策が功を奏し、途上国で経済成長と衛生環境・医療環境の改善が進めば、人口増加率が再び上がることも考えられる。その場合、21世紀末には世界人口が160億人を超えることもありえる。年率1%で人口増加すれば70年で倍になるからだ。 そうなると人口増加で地球が全員を養うことができなくなることが懸念される。途上国の人々の生活水準は先進国より低い。だが経済成長すれば差は縮まってくる。やがて途上国の人々も牛肉のステーキを食べ世界旅行をするようになる。誰もが生まれた国や地域に関わりなく、世界で最も高い生活水準を享受している国や地域の人々と同じ生活をする権利がある。だが、そうなると、80億人という人口ですら、現在の生産力では養うことはできないのではないだろうか。況や160億人になったら、到底不可能に思える。 科学技術が進歩すれば生産力は2倍、4倍と増大していく。そうなればたとえ人口が160億人になろうと世界全ての人が先進国の平均的な市民と同等の生活を送ることが可能になる。そういう楽観論がある。だが食糧生産には土地と海が欠かせず、その生産力を4倍にすることは容易ではない。過剰人口を月や火星に移住させるなどという考えを持つ者もいるがSFでしかない。酸素も水もなく、宇宙から降り注ぐ危険な高エネルギー粒子を遮る磁場もない月や火星を多数の人間が暮らせる場所に変えるには、それが可能だとしても数百年、いや数千年掛かる。 確たる根拠のない私見に過ぎないが、すでに世界人口は増えすぎているような気がしてならない。日本も1億2千万人は多すぎ、それが生活困窮者を生む原因の一つなのではないだろうか。高齢化が進む中、人口減少は勤労世代の負担増に繋がる。だから少子化対策が欠かせないことは分かる。だが長期的な視野で考えれば、高齢者は先にこの世を去っていくのだから、いずれ勤労世代の負担は減る。寧ろ人が暮らすことが難しい山岳地帯が多い日本では人口5千万人くらいがちょうどよいのではないだろうか。いずれにしろ、人口増加は環境破壊、食糧不足、対立の激化など様々な問題を引き起こす。人口が増えればよいとは一概に言えない。 了
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