☆ 雨が降ると思う ☆


 雨の日が好きだと言う者がいるが筆者は嫌いだ。気が滅入るし、何より外出した時に洋服や靴が汚れる。店に入るとき傘の始末に困ることが多い。眼鏡をしている者ならば誰でも経験があるだろうが、雨の日は湿度が高く眼鏡が曇る。特にマスクをしていると鼻のところから息が抜け目の前が真っ白になる。おかげで夜など周囲が見えず足元が覚束なくなることもある。曇り止めの道具は色々あるが役立たないことが多い。曇りが酷い時には已む無く眼鏡を外すが当然に視界はぼやける。雨の日はろくなことがない。

 雨が降るといつも思うことがある。科学技術の進歩は目覚ましいと言われる。しかし身近なところでは案外進歩していない。人間並みに会話ができるAI、ビッグデータ分析、ウェアラブルデバイス、ドローン、空飛ぶ自動車など確かに画期的な技術が生まれている。しかし、それほどのことができるのに、なぜ雨を避ける道具に傘と雨合羽しかないのか。傘は混雑した場所では他人に迷惑をかける。しかも風が強い時にはほとんど役立たない。雨合羽のまま電車に乗車したら顰蹙を買うこと間違いなしで、そもそも蒸し暑くて敵わない。何か画期的な技術、たとえばスマホのアプリを一寸操作しただけで雨が身体を避けるような装置は実現できないのだろうか。

 おそらくできないのだと思う。人間の科学や技術は産業革命前と比較して飛躍的に進歩した。だが、それでも人間の知恵など高が知れている。知的生命体などと威張ってもできることは限られている。いつまで経っても雨は恨めしい。




(2024/5/8記)


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