☆ もし私だったら ☆


 新型コロナの給付金4630万円が男性の口座に誤送金された。もし、私の口座だったら、どうしただろう。

 入金通知サービスに加入していないので、入金があってもすぐには分からない。だから、先に役所から誤送金したという電話が入るに違いない。平日午後6時台のNHKのニュース番組に「私は騙されない」というコーナーがあり、電話詐欺の手口が毎日紹介され、視聴者の注意を喚起している。最後に、アナウンサーが「お金の話が出たら、それは詐欺です」という決まり文句で締めくくる。私はそのコーナーをよく観ている。だから、役所からの電話をすぐには信じない。新手の詐欺だとまず疑う。そして、こちらから電話をするからと言っていったん切る。それからどうする。役所に電話をして確認するか、警察に連絡する。たぶん、警察に連絡する。詐欺らしい電話があったと。警察が調べた結果、それが事実であったと分かる。もちろん、黙って引き出したりしないで返金する。だが、役所の担当はたぶんこう言う。「職員が迎えに参ります。返金の手続きのために銀行まで同行してください。」私としては、間違えたのは役所の方なのだから、「そちらですべて処理してくれ」と言いたい。だが、私の確認なしに処理をして後で揉めると嫌だから、私の同行を必ず求めると思う。私が役所の職員だったらそうする。銀行の約款でもそうなっているかもしれない。同行するのは良いが銀行は平日しか開いていないし、こちらは仕事がある。恐らく、そのあたりは銀行と役所で良きに図ってくれるだろう。とは言え、私としてはとんだ迷惑だ。「慰謝料として、入金額の1割を寄越せ、遺失物の拾得と同じだろう。」と啖呵を切りたくなる。もっとも、気の弱い私には到底できないから、大人しく指示に従うが、気分は良くない。

 もし、電話が来る前に、残高確認や引き出しで残高を知ったらどうする。残高がいきなり5千万円近くになっている。喜ぶほど、おめでたくはない。銀行の窓口が開いていれば、すぐに確認に行くが、知ったのが夜間帯だったら、窓口は閉まっている。各銀行とも24時間対応の緊急連絡先がある。だが、そんな番号を一々メモっていない。ネットで緊急連絡先の番号を調べるか、警察に相談することになる。いずれにしろ面倒だ。それも深夜帯だったら、明日にしようと思うに違いない。だが、気になって寝られない。誰が間違えたのだろう。すぐに思い浮かぶのが、マネーロンダリングだ。私の口座が悪人のマネーロンダリングに利用されている。いや、もしかしたら私が気が付いたことに悪人が気づき、私を消しに来るかもしない。気の弱い私は大パニックだ。慌てて警察に連絡するようなことではないと思いつつも、耐えられずに110番通報する。警察が調査してくれて、役所の誤送金だと分かる。だが、それまでに私の寿命は、3年は縮んだ。

 誰でもミスはある。だから、役所の職員を責める気はない。新型コロナ対応でくたくたになっていたのだろう。だが、間違って振り込まれた側もくたくたになる。誤送金が起きないようなシステムを作ってもらいたい。


(2022/5/20記)


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