☆ 労働組合の明日 ☆


 連合が立憲民主党に共産党との共闘を見直すよう求めている。理由は外交・安全保障で意見が大きく異なる者が共闘することは理解が得られないからだと言う。だが、外交・安全保障は労働組合の連合体である連合の主要な活動目的ではない。連合の役目はあくまでも労働者の権利を守り、労働者の労働環境、生活環境を改善することにある。それに、共産党は日米安保の解消を目指すことを明言してはいるが、国民の同意の下で実施すると言っており、政権参加したら直ちに政策として打ち出すとは言っていない。

 連合に加盟している民間企業の労働組合は総じて共産党との関係がよくない。労使協調路線をとる組合主流派に対して、共産党系の組合員は経営側との対決を求め、運動方針や組合幹部人事で対立することが多い。外交・安全保障の見解の相違を理由に挙げているが、目の敵である共産党を排除したいというのが連合の本音だろう。だが、労働者の権利を守り、待遇改善を求めるという労働組合最大の目的では共産党と一致しているのだから、好き嫌いを超えて是々非々で共闘するべきだろう。

 筆者が勤めていた企業にはユニオンショップ制の労働組合があった。だから雇用されると管理者になるまで全員が自動的に組合員になる。しかし、最近は、組合員の多く、特に若い人はほとんど組合に関心がなく、組合費を取られることを忌々しく思っている。労働組合が自分たちの権利を守るために役立っているという意識も薄い。ここ30年、日本は賃金が上がらず格差だけが広がったと言われるが、労使協調路線で経営層と戦わない労働組合や連合にも責任がある。そのため、労働組合に期待しろと言われても、誰も聞かない。20代、30代では、他の世代よりも自民党支持が多いという世論調査があるが、これも労働組合が若い世代に支持されていないことを如実に物語っている。

 41年間、会社に勤め、組合員も管理者も経験した者として、たとえ労使協調路線でも労働組合の存在には意義があると思っている。不満や不安があるとき相談窓口になるし、それを基に改善がなされることもある。だが、近年は、パワハラ、セクハラ、名ばかり管理者が大きな社会問題となったこともあり、経営層が労働者の権利の擁護、労働環境改善に積極的になっており、労働組合の存在意義は薄れている。賃上げも、連合や個々の労働組合以上に自民党が積極的に経済団体などに働きかけており、ここでも影が薄い。それゆえ、いまのままでは、労働組合と連合の存在意義はどんどん薄れていく。存在意義を失わないためには、各企業の労働組合は、もっと組合員、さらには組合員ではないが非正規雇用で働く仲間たちの処に出向き、その実情を把握し、何が求められているかを認識し、経営に対してしっかりと意見を述べる必要がある。また、世論の声にもっと耳を傾け、それを組合員で共有し議論をして、その結果を経営層に伝え改善を求めることも大切になる。そういう地道な活動を通じて初めて労働組合の存在意義が広く認知される。連合は共産党に対して言うべきことは言い、その上で、是々非々で共産党と共闘する懐の深さを示すことが望まれる。さもないと、労働組合も連合も衰退の一方になる。


(2021/12/18記)


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