☆ 脳は何をしている ☆


 若いころから忘れぽかったが、歳を取ってますます酷くなった。先日、ふとクライマックスシリーズのことが脳裏を過った。そこで巨人の第一戦先発を予想してみた。当然に彼なのだが、名前が出てこない。佐野、梶原、坂倉・・どれも違う、他の名前を思い浮かべる、しかしいくら経っても正解が出てこない。別に名前が出てこなくても、すこしも困らないのだが、分からないと気になって仕方がない。やむなく、スマホで調べる。そう、菅野だ。スワローズファンで巨人ファンではないが、当たり前に菅野は知っている。それが出てこないのだから情けない。実は、最近、山田哲人の名前が出てこないこともあった。脳神経内科で脳のMRIを撮ってもらった方がよいかもしれない。そう言えば、「MRI」という言葉が出てこないこともあった。まあ、それを思い出すくらいなので大丈夫とは思う。

 思い出そうとして、いろいろな名前を頭の中で思い浮かべるときに、脳は何を遣っているのだろう。コンピュータならばデータベースで、巨人のエース、日本を代表する投手を探すことになる。データ量が膨大だと検索に時間が掛かるが、答えが出てこないことはない。そもそも日本人の名字の数は、精々数十万くらいだろう。だからコンピュータならば簡単に答えを見つけ出す。だが、人間の脳は処理速度が遅く、そうはいかない。しかし、人間の場合、覚えている名字の数はおそらく精々数百くらいだろう。しかも、安倍、菅、岸田、枝野などではないことは分かっている。自分と同じ名前ではないことも分かっている。だから、検索が必要な範囲は狭く、脳の処理速度が遅くても、それほど時間が掛からずに思い出してもよいはずだ。

 脳の処理はコンピュータとは違う。では、どう違うのか。巨人のエースは誰?という疑問が脳神経回路の中で様々な信号を生み出す。そして、菅野を探す。たぶん、脳はコンピュータのように理路整然としたデータベースを持っているのではない。「菅野智之:巨人のエース、右投げ、12年ドラフト一位、沢村賞受賞2回・・」などというように検索に便利な形式で保存されている訳ではないに違いない。おそらく、2つのサイコロを同時に投げて、2つとも6が出るのを待つようなことを遣っている。確率は36分の1、決して高い確率ではないが、普通は30回くらいやれば出現する。しかし、100回やっても出てこないことはある。思い出すことが出来ないというのは、そういう状態なのではないだろうか。

 凄い発見をしたように思い、この考えを知人に伝えた。だが、直ちに、「では、なぜ、大抵の場合はすぐに答え(菅野)が見つかるのか。」と反論された。ぐうの音もでない。世紀の発見はあっという間に潰えた。所詮この程度の頭だ。菅野が思い出せないのも当然だと諦めるしかなかった。


(2021/11/8記)


[ Back ]



Copyright(c) 2003 IDEA-MOO All Rights Reserved.