☆ 生活習慣を変えよう ☆


 東京の一部地域で飲食店の営業時間の規制が緩和された。だが、23区内では依然として午後10時までの規制が続く。飲食店の経営は営業時間の短縮で収入が減り苦しくなっており、早期の解除を求める声が多い。規制と言っても、強制執行や罰則がある命令ではなく、要請に過ぎず、その気になれば店は自主的な判断で10時以降も営業はできる。だが、感染拡大の対策に必要と言われれば、要請を拒否することは難しい。日本社会の同調圧力の強さも手伝い、多くの店は要請に従っている。

 しかし、考えてみると、午後10時以降も営業をしているのが当たり前というのは実におかしな習慣だ。夜遅くまで飲み食いをしているのは明らかに身体に良くない。実際、飲みすぎ、食べ過ぎで身体を壊す者は少なくない。アルコール中毒になる者もいる。もし、深夜勤務をする者を除いて日本に暮らす者全員が、午後10時以降は飲み食いをせず、12時までには寝るようにすれば、健康状態は改善され、医療費は減り、健康保険の負担を減らすことができる。そんなことをしたらストレスが溜まって却って不健康になると文句を言う者もいる。しかし、それは一時的なことでしかなく、その気になれば、すぐに新しい生活リズムに慣れ健康状態が改善する。

 飲んで騒ぎたい元気な若者を除くと、夜遅くまで飲むのが習慣化している理由の一つは、残業時間が長いことにある。仕事が終わるとすでに8時を回っている。まっすぐ帰ってもやることがない。ならば、仕事の疲れを癒すために、ちょっと一杯やって帰りたい。そうなると、勢い12時前後まで飲むことになる。早めに仕事を終わらせて、早くから飲みに行くのは、たいてい、異動に伴う歓送迎会とか、部やグループの懇親会だ。そういう飲み会では、気の合わない者と同席することが少なくなく、また、部長や異動者の挨拶など面白くもない長話しを聞かされたり、人前で話をするのが苦手なのに話しをさせられたりする。だから、気分転換に気の合う者同士で二次会へという流れになる。一次会が6時に始まっても、二次会にいけば、確実に10時を回る。こうして、店としては10時以降も営業することが必要になる。

 この機会をとらえて、残業をなくし、歓送迎会や懇親会は昼間に遣るようにしたらどうだろう。そうすれば、平日夜間の飲食は6時から始まり9時くらいまでには終わる。店は10時過ぎまで営業する必要はなくなる。収入面でも早い時間から客がたくさんくるから10時過ぎまで営業しなくてもよい。そもそも店主や従業員の健康を考えれば閉店時間は早いに越したことはない。

 いずれにしろ、夜遅くまでオフィスでたくさんの人が働き、深夜までその近くの店が開いているという環境はけっして健康的なものではない。健康的であればよいというものではなく、不健全に見えるところに文化の華が咲くということはある。だが、慣例化しているダラダラした飲み会は文化というより改善すべき悪習に近い。これまでの労働環境と生活習慣を見直すことで、多くの者が健康で幸せになることができると思われる。少なくとも、夜の街にたくさんの人が集うことが社会の活力になるというような発想は見直すべきだ。


(2020/8/29記)


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