☆ 新型コロナの影響 ☆


 筆者は65だが、外出の自粛が要請され、家に籠るなどという経験はかつて一度もなかった。3月末に乗って以来、電車にも一度も乗っていない。一カ月以上、電車を利用しないなどというのは、おそらく小学生以来のことだと思う。

 65で会社を辞めたら、全国を旅しようと計画していた。認知症の親の介護が必要だが、親戚かショートステイに預かってもらい一週間程度旅行するつもりだった。だが新型コロナの影響で計画は完全に頓挫した。

 ほんの3カ月前まで、こんなことになるとは誰も予想しなかっただろう。世界中で、特に欧米で新型コロナが感染爆発して、膨大な数の死者が出るなどと。日本でも、首相と東京都知事が3月中旬まで、予定通り今年7月に東京五輪を開催すると宣言していた。そんなことが今では遠い昔のことのように思える。

 新型コロナは手強く、そう簡単には収まらない。医学が進歩しているとは言え、ワクチンも、治療薬もそう簡単には開発できないだろう。専門家の多くは1年半以上は掛かるだろうと予想している。一年延期した東京五輪の開催も危ぶまれる。さらなる延期は非現実で、そうならないことを祈るが、二度目の幻の東京五輪となる可能性は低くない

 社会のあらゆる分野で、体制や業務遂行方法の見直しが必要となる。飲食業や観光業は、従来のやり方では、三密を避けることは不可能で、全く新しいやり方が必要となる。だが、そのためには、施設などの改造が必要となり容易ではない。三密を避けるためには客数を大幅に減らすことが欠かせないが、そうなると収入が激減し経営が苦しくなる。1年後には元に戻るという確証があれば、踏ん張ることができるだろうが、その保証はない。むしろ、三密を避け、人と人との間隔をとるというライフスタイルが数年間続くと予想しておいた方がよい。しかし、飲食業や観光業の多くはそれに適応することは難しいだろう。2、3年後、都心の繁華街や観光地の街並みは今とは全く違う姿になっているかもしれない。さらに、教育や介護なども大きな変革が必要となるだろう。

 テレワークやビデオ会議は非常時の代替手段ではなく、普通のこととなろう。日本の住宅は狭くて、家で仕事をするのには向いていない。事実、色々と弊害がでている。だが、それでも、1年も続けばそれが当たり前になる。そもそも、ICTの時代、大多数の従業員が出社するというこれまでの慣行自体が時代遅れだったとも言える。だから、早晩、人々はテレワークやビデオ会議が自然なものと感じるようになり、違和感が薄れる。

 いずれにしろ、新型コロナが夏ごろまでに完全終息すればいざ知らず、そうでなければ、否応なく人々はコロナ時代の生き方、生活習慣を見出すしかないことになる。それがどのようなものとなるかは分からない。しかし、そのインパクトは、おそらく、ICTと同程度、あるいはそれ以上の変化を社会にもたらすことになろう。


(2020/5/11記)


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