☆ 避難 ☆


 台風19号は広い範囲に亘って大きな被害をもたらした。川越市と八王子市に暮らす3人の友人は被害はなかったが、避難勧告があり、そのうち一人は実際に家族で避難したと言う。

 筆者が暮らす武蔵野市は近隣に大きな河川がないこともあり、浸水被害に遭う確率は低い。台風の当日も、消防団の車が巡回し「外出を控えるように」とのアナウンスを流していたが、避難勧告がでることはなかった。それでも、一日で千ミリを超えるような豪雨に見舞われたら浸水被害の危険性は高まる。そのとき迅速に避難できるだろうか。

 雨が上がった翌日曜日、一番近い避難所である中学校まで歩いてみた。家に近く大人の足なら1分少々で到着する。筆者の場合、90過ぎの高齢の両親を連れていく必要があるが、それでも30分あれば何とかなる。中学校には広い体育館があり、避難者はここで災害が収まるまで過ごすことになる。外から眺めただけだが、床下が高く、家が浸水してもここなら多分大丈夫だと感じた。体育館が浸水するようであれば、4階建てなので上に逃げることができる。

 だが、いくつか問題がある。市には20か所の避難所があるが、地区ごとに避難先がきまっている訳ではなく、避難先は自分で判断しなくてはならない。筆者のように近くに避難所があれば迷うことはないが、避難所から離れている者は行き先を迷うだろう。また、筆者が暮らす場所は典型的な住宅街で、夜間休日などは人口密度が高く、近隣住民がすべて避難すると、スペースが足りなくなる恐れがある。歩いて7,8分のところにも避難所に指定されている小学校があるが、そこに受け入れる余裕があるかどうかは行ってみないと分からない。もちろん、満員だからと言って、非常事態なのだから追い出されることはない。しかし、自分も周囲も相当に窮屈な思いをすることになる。やはり、避難者数の偏りが生じないようにするためにも、地区ごとに避難先を決めておくべきだろう。

 避難勧告にも拘らず避難しなかった川越と八王子に暮らす二人は「避難所まで徒歩で30分かかる」、「自宅より避難所が安全であるとは思えない」と言っていた。今回の台風で、首都圏の多くの地域で、避難所が足りず、住民を安全に避難誘導する手順が定まっていないことが明らかになった。台風19号のような巨大な台風は滅多に起きることはない。だが、温暖化の影響もあり、巨大な台風など大きな自然災害の可能性は高まっている。避難所を増やし、整備し、住民を避難誘導する手順を確立し、それに基づき住民と行政が協力して定期的に避難訓練を実施することが強く望まれる。


(2019/10/20記)


[ Back ]



Copyright(c) 2003 IDEA-MOO All Rights Reserved.