スウェーデンの16歳の女子高校生が国連で温暖化対策の強化を訴えて話題になっている。筆者とは歳の差48歳、彼女が筆者の歳になったとき、地球がどうなっているか想像すると彼女の訴えがよくわかる。2億5千万年前の生物大絶滅には地球温暖化が重要な役割を果たしたと推測されている。若い世代にとって温暖化は最も深刻な問題なのだ。 地球温暖化の影響で北極や南極、その周辺の氷床が溶けだしている。これは海水面の上昇だけではなく、温暖化を加速する効果がある。と言うのは、長期に亘る積雪が作り出した氷床は鏡の働きをして太陽光を跳ね返し、温暖化のブレーキ役を務めているからだ。そのブレーキが消滅すれば、温暖化ガス増加と相俟って温暖化は加速する。もっとも、温暖化のメカニズムは複雑で、簡単なモデルで議論することには限界がある。二酸化炭素が増加し、氷床が減少したからと言って、温暖化が加速し、人類を含む生態系が壊滅的な打撃を受けるということが必然的に帰結する訳ではない。つまり、ここでの議論は一つの仮説にすぎない。だが、可能性はけっして低くない。 いずれ二酸化炭素を効率よく、かつ大規模に回収する技術が開発され、温暖化の進展を阻止できると楽観する者もいる。だが、二酸化炭素は安定な低分子であり、そう簡単には回収できない。また、回収するためにエネルギーを費やす必要があり、それ自身が熱源となる恐れがある。二酸化炭素回収技術が功を奏して大気中の二酸化炭素の増加を抑えることができても、氷床の減少や他の温暖化ガスの効果で温暖化が継続することも十分にありえる。 このように、影響がいよいよ深刻になり、誰の目にも温暖化対策が不可欠であることが分かってからでは手遅れになる可能性が高い。温暖化は、かつての公害のように、人と他の生物の生命と健康に直接的な悪影響を及ぼすものではない。だから、どうしても、その影響を軽視しがちになる。トランプ米国大統領のように、経済活性化を妨げるとして温暖化対策に消極的な者も少なくない。だが、今すぐに各国が協力して強力な対策を取らないと地球の未来は危うい。半世紀後、あのとき、あの少女の訴えを真面目に聞くべきだったと嘆くことがないようにしたい。 了
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