☆ 科学技術は凄いか ☆


 科学技術の進歩は目覚ましいとよく言われる。近頃は、人工知能で何でもできるようになると宣伝されている。しかし、そうは思えない。

 理由はインフルエンザ、毎年冬になると大流行するウィルス感染症の存在だ。毎年感染者数は国内だけで1千万人を超える。一時的に高熱がでるだけで、ほとんどが1週間以内で治るとは言え、高熱が出る数日間は苦しいし、幼児や高齢者では死者がでたり後遺症が残ったりすることもある。社内で多数の患者が出て事業運営に支障が生じることもある。流行時期は受験シーズンで、感染が受験の結果に影響を与えることも少なくない。つまり重症化することは少ないとは言え、撲滅に向けて努力することが強く期待される病であることは間違いない。

 ところが、それができない。理由は、ウィルスの遺伝子変異が速く、ワクチンや抗ウィルス薬の効果が限定的だからだと説明される。しかし、幾ら変異が速いとは言え、人間の細胞に侵入するための基礎的な機能は維持されている。それがなくなれば感染することはない。つまり、その部分をターゲットにすれば、耐性菌が出来ない特効薬に近い薬ができると思われるし、ウィルスの検出が容易になると期待される。ところが、それが簡単にはできないらしい。

 確かに、生命体の構造や機能は極めて複雑で、水素原子のエネルギー準位を決めるように、基礎方程式から厳密解を得るような単純な遣り方は通用しない。だが、まさにそういう複雑な現象に対してこそ、流行のディープラーニングが役立つと思われる。ウィルスの構造や機能はパターンであり、また流行の傾向もパターンだ。そのパターン認識で人を超えるディープラーニングを使えば、ウィルスの遺伝子変異や流行を予測することができるのではないだろうか。そうすれば、撲滅は無理でも患者数は大幅に減らすことができる。そんな風に素人は考えたくなる。

 だが、そう容易くはいかない。それはまだ技術が十分に成熟していないからだと言われる。しかし、おそらく技術が進歩しても、人間はこれから先もずっとインフルエンザに悩まされ続けると予想する。AIや遺伝子操作など最新技術にばかりに目を囚われて、あらゆる技術は指数関数的に進化すると思い込む技術至上主義者がいるが、正しくない。多くの技術が、たとえば海底都市建設などが夢と消えている。核融合も実現性が疑われている。人間の力には限界があり、それは人工知能を使っても変わらない。科学や技術を過信することなく、技術全般の状況をよく見て、その適切な使い方を考えるべきだと思われる。


(H30/1/20記)


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