☆ ウィルス対策 ☆


 自宅のパソコンには、毎日たくさんのウィルス付のメールが届く。インターネットサービスプロバイダでは、ウィルス対策のサービスを提供しているところもあり、それを利用してもよいのだが、複数のプロバイダのメールを使っているため全部加入すると追加料金が馬鹿にならない。それにウィルス感染源はメールだけとは限らず、WEB経由のことも多い。先日も勤め先のパソコンにWEB経由でウィルス感染した可能性があると社内のウィルス対策部署から連絡を受けて真っ青になった。調査の結果感染していないことが判明して胸をなで下ろしたが、いつ本当に感染するか分からない。そんなこともあり、自宅では、プロバイダのウィルス対策サービスを利用していないのだが、不安になることは少なくない。ウィルス対策ソフトがたいていの場合はブロックしてくれるが完璧ではない。生まれたてのウィルスなどは駆除できないことがある。

 特に最近のウィルスが厄介なことは、感染してもすぐに気が付かないことだ。インターネットが普及し始めた90年代半ばのウィルスは、感染するとすぐに活動を開始してパソコンが動かなくなるのが普通だった。保存していたファイルが使えなくなり泣いた者が多かったが、被害は個人または組織内に留まり、影響の範囲は狭かった。しかし、今のウィルスは違う。密かにパソコンの中に忍び込み、まずはパソコン内部のデータを、さらには他人のパソコンやサーバにも侵入してデータを盗み取る。この手のウィルスが原因で、大量の個人情報の漏えいを起こした企業や役所も少なくない。こういう静かに侵入するウィルスでは感染源や感染時期の特定が難しく、被害の範囲もはっきりしない。そのため対策には費用と時間が掛かり、顧客情報が漏えいすると経営に大打撃を与えることもある。まったくもって困ったウィルスだ。

 最近はスマートフォンでも被害が出ている。IoTも危ない。IoTは防犯、医療や衛生管理の分野での活用が期待されている。しかし、それがウィルス感染すると人命にも関わる。今や、コンピュータウィルスは、病原菌のウィルスに匹敵する社会的脅威になっている。

 対策にはAI技術が欠かせない。日々新たに生み出されるウィルスの数は膨大で、生まれた後からウィルスのパターンを抽出して駆除するという既存の遣り方では限界がある。既存のウィルスパターンに合致しなくても、怪しいソフトを検知しブロックできるソフトが欠かせない。しかし、新しいウィルスを作る方法は無数にあり、人間の頭で追いかけたのでは追いつかない。ビックデータを高速で処理しそこから様々な新ウィルス誕生のパターンを抽出して将来を予測できるようなAIがないと対処できない。

 だが、そうは言っても、そういうAIを作ることは容易ではない。またウィルスを作る側もAIを活用して、AI型高性能ウィルス対策ソフトの裏をかくAI型高性能ウィルスが生まれる可能性もある。そうなると、どんな薬を作っても耐性菌が登場して薬の効力を奪ってしまう病原体の世界と同じことになる。

 つまり万能の処方箋はないと覚悟する必要がある。パソコン、スマホ、インターネットは便利な道具だが、パンドラの箱を開けてしまった可能性がある。コンピュータウィルス作りは物理的な暴力と異なり、知的かつゲーム感覚で、罪の意識は薄い。そのためにウィルスを作る者を無くすことはできない。だとすると、私たちは自分で対策をしなくてはならない。

 そのためには、プロではない一般市民である私たちは、二つのことを肝に銘じておく必要がある。一つは無闇とインターネットにアクセスしない、覚えのないメールは開かない、こういう初歩的な対策を徹底すること、そして二つ目は、今ここで使っているパソコンやスマホがすでに感染している可能性があることを頭に入れておくこと、この二つだ。これにより、用心深くなり、感染のリスクが幾らか減る。感染した時の備えも進む。それ以上のことは天に任せるしかない。


(H29/12/3記)


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