☆ ロボットは怖いか ☆


 人工知能の進歩で、仕事の多くがロボットに取って代わられると予想されている。予想が当たるかどうか、今は分からない。だが、新技術の普及で不要になった仕事はたくさんある。だから、ロボットの普及で不要になる仕事が増えていくことは間違いない。だが、そのことよりも、ロボットが人にとって代わることに対する人々の反応が興味深い。

 半世紀以上前の子ども時代、21世紀にはロボットが人間に代わって労働をするようになり、人は働く必要がなくなると言われた。労働から解放された人々は、自分の好きな芸術、学問、スポーツなど創造的な活動に専念する。全ての者が自分の好きなことをしても、ロボットたちが、人が遣ってきた仕事をしてくれるから暮らしに困ることはない。ロボットは人間よりも力が強く賢く正直で疲れ知らずだから、人間よりも良い仕事をする。鉄腕アトムが建築現場で働いたら偽装などが起きることは絶対にない。

 これが半世紀前の日本人のロボット観だった。鉄腕アトムなど人間より心優しく賢く強いロボットが大活躍するアニメやドラマが、この友好的ロボット観の醸成に大きく貢献した。また、ロボットが人間にとって代わるなどということは、当時はまだ夢物語に過ぎなかった。だから、そのことの社会的影響について考えることもなかった。

 半世紀前の夢が楽観的過ぎたのは明らかだが、ロボットが私たちの仕事を代行してくれること自体はよいことではないだろうか。日本のように少子高齢化が急速に進む社会ではもろ手を挙げて歓迎しても不思議ではない。だが、どうも人々の顔色は冴えない。人々はロボットが進歩することを恐れているようにすら見える。確かに現実的には難しい問題がたくさんある。ロボットのミスで被害がでたとき、責任は誰が取るのか、ロボットに人間並みの重要な仕事をさせるには法整備が必要で、しかもどういう法律を作ればよいか哲学的な議論も必要となる。だが、難しくとも課題は解決可能であり、ロボットが普及することのメリットは大きい。

 何がロボットを警戒させるのだろう。理由は二つあると思われる。一つはロボットが私たちの仕事を奪ってしまうという恐れだ。ロボットは優秀で、仕事を奪われた者たちは失業するか、ブラック企業で扱き使われるしかない、そういう暗いイメージが脳裏を過ぎる。もう一つはロボットが人間に反乱を起こして人間を支配するようになるという恐れだ。

 だが、いずれも杞憂に過ぎない。消費をするのは人間でありロボットではない。経済を活性化するには人間の懐を豊かにしないとならない。ロボットが人間にとって代わるようになれば、生産性が飛躍的に向上し労働時間は大幅に短縮され、賃金は上昇するようになる。ロボットが人を支配することはない。人間を支配する動機がロボットにはないからだ。つまりロボットに脅威を感じる必要はなく半世紀前の無邪気な子どもたちのように、ロボットに大いなる夢と希望を抱いてよい。

 「ロボットは不気味で、そんなに簡単に受容できない」と言われるかもしれない。ロボットという他者への恐れや違和感は簡単には克服できない。だが、ロボットの進歩はこれから急速に進む。研究成果は蓄積されてきており飛躍の時を待っている。経済活動の拡大と科学技術の進歩はロボットを要請する。人だけでは処理しきれないほど人間社会の活動は拡大してきているからだ。だから、いまからロボットに慣れ親しんでおく必要がある。そのために必要なことはロボットを親しみやすいものとする工夫だ。そのために、優れたデザイナーの登場に期待したい。


(H27/12/6記)


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