再来年4月からの消費税増税実施に併せて、低所得者の負担軽減策が検討され、還付方式と軽減税率方式が提案されているが、前者を推す自民党と後者を推す公明党が対立して纏まりそうもない。 還付方式は手続きが面倒で消費者の負担が大きい。高齢者などは還付が受けられる条件が揃っていても申請しないことがあるだろう。そもそも自民党が本気で提案しているのか疑わしい。財政再建を優先するために負担軽減策を取りたくないというのが自民党(と言うか財務省)の本音だろう。 軽減税率方式は、POSレジシステムの改修など事業者の負担はあるが、IT時代の現代、負担の規模はたかが知れており導入は容易と考えられる。企業の業績は改善しておりシステム改修の費用負担など大したことはない。だが、軽減税率方式では低所得者だけではなく富裕層も恩恵を被る。その分、還付方式に比べて税収減の規模が大きくなり増税効果が薄れる。だから財務省が抵抗するのも無理はない。 だが、こういう議論はどうも無意味な気がしてならない。財政が危機的な状況であると言うのであれば、負担軽減策など取るべきではなく、低所得者対策は雇用の創出や高齢者への個別の生活支援という形で実施することが望ましい。危機的な状況に至っていないのであれば、本格的な景気回復まで増税を延期して、その間に支援策を整備すればよい。しかも、還付方式にしろ、軽減税率方式にしろ、その効果は小さく低所得者の生活が改善することは余り期待できない。結局のところ政治家が選挙対策に負担軽減策を掲げているとしか思えない。 そもそも税金の歳入と歳出は分けて考えるべきで、消費税増税は歳入に関する問題、低所得者対策は歳出に関する問題であることを認識する必要がある。たとえ消費税増税を中止しても低所得者の生活が楽になる訳ではなく、貯蓄の目減りや物価上昇などで年々生活が苦しくなっている者が少なくない。つまり消費税増税をするしないに関わらず、低所得者対策は欠かせない。ところが、両者を混同し歳入の次元で併せて考えようとするから無理が生じる。低所得者対策は歳出の次元で考えるべき問題で、他の歳出を削ってでも低所得者対策を策定・実施することが政治家や官僚の責務なのだ。そう考えれば、負担軽減策など取らずとも問題の解決策は見つかる。 了
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