☆ ビットコイン ☆


 取引所の一つが破綻して、一部の者の間だけで知られていたビットコインの存在が俄かに話題になっている。おかげで言葉だけは知っていたが、その仕組みがさっぱりわからなかったのが、おおよそのところが掴めるようになった。

 ビットコインは、ネット時代に相応しい。お金を払うだけではなく、セキュリティの問題を解くことでも手にすることができる(これを「発掘」という)。これは面白いアイデアだ。国家や大企業の後ろ盾がなくともグローバルに流通できるのも面白い。既存の電子マネー、たとえばSuicaなど既存の通貨の信用に裏打ちされて初めて機能する電子マネーなどとは異質な存在だと言ってよい。

 麻生財務大臣は「破綻するに決まっている」などと得意げに話しをしているらしいが、ビットコインのことが分かっているか怪しい。確かに、話しに聞くところでは、実際に使える店はごく限られており通貨として十分に機能しているとは言えない。さらに、通貨としての実績がないのに思惑だけで価値が上がり、投機の対象となっているところに致命的な欠陥がある。しかもネットのセキュリティの脆弱性が露呈し、ビットコインの技術的リスクの大きさも明らかになった。

 経済学者の岩井克人氏は、資本主義の本当の危機は物が売れなくなることではなく、貨幣の信用が崩壊しハイパーインフレが起きることだと論じている。そして、麻生大臣と同じように信用の裏打ちがないビットコインは成功しないと予言する。

 ビットコインはおそらく失敗に終わる。だがこれからもビットコインのような、ネットを通じて、国家や国際機関に制御された通貨(流通貨幣)を超えた存在を模索する動きは続く。なぜなら、資本主義における究極の商品は、マルクスが示唆する通り「貨幣」だからだ。ネットであらゆるものがグローバルに流通する現代、この究極の商品を自由に創造することを目論む者たちの動きを抑制することはできない。

 別に皮肉を言っているつもりも、混迷する世界の到来を予言するつもりもない。ビットコインは時代の必然であり、大きな可能性と評価するべきだ。ビットコインのような試みが悉く挫折し、強大な組織の信用なしには通貨は成立しないと証明されるかもしれない。だがそれでも、そのことが証明されるだけでも意義がある。そして、おそらくそのような証明はなされない。それがどのようなものであるか予想は付かないが、半世紀後までには通貨など貨幣システムの抜本的な革命が起きる。ビットコインはその序幕のように思われる。


(H26/3/3記)


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