☆ 相変わらず ☆


 麻生副総理のナチス発言で政界が揺れている。自民党の圧倒的多数、景気回復の兆しという現実もあり、これ以上騒ぎが大きくなるとは思えないが、それにしても「相変わらずだなあ」と呆れてしまう。

 麻生をナチスの支持者だなどと思っている訳ではない。だがその不用意な発言は表面的に見ればそう受け取られても致し方ない。非自民の立場を取る報道が話しを煽っている感もなくはないが、それでも諸外国が反発するのは当然のことだ。

 「悪い例として取り上げた」などと一拍遅れてから言い訳しても説得力はない。麻生は積極的な改憲派であり、その思想信条からして、ナチスを悪い例として取り上げることは辻褄が合わない。ナチスの事件は、如何に憲法とその精神を堅持することが大切かを教えている。ナチスを悪い例として取り上げれば、基本的に護憲の立場に近づく。麻生は言い訳などせずに、国内外の抗議に対して素直に謝罪した方がよい。「軽率な発言だったと悔やんでいる。心からお詫びをすると。」と。

 しかし麻生だけではない。政権を失ってから僅か3年で復帰した自民党だが、政権転落前と変わったところはほとんどない。徹底した金融緩和は、政権交代がなかったとしても、おそらく実施していただろう。消費税増税はそもそも自公連立政権のアイデアだった。ただ変わったところと言えば、党内でハト派あるいはリベラルと言える政治家がほとんどいなくなったことくらいだろう。しかし、それは日本の政界地図全体に言えることで、日本社会の流れが変わってきたことを映し出しているだけで、自民党内部から自律的に湧き出してきた変化ではない。

 結局、民主党が余りにも期待外れだったことが大きい。たとえ選挙で自公に政権を奪還される運命だっとしても、自公路線が駄目ならば、再度、民主を選択すれば良いという信頼感を人々の心に残すことができていれば全然違っていた。そうすれば自民党も変わっていたはずだ。そして日本社会がこれほどまでに保守化することもなかっただろう。

 民主党政権の3年間は、小沢VS反小沢の政争に明け暮れる不毛な日々だったが、それでも私たちはそこから学ぶ必要がある。民主党政権発足当初、確かに変化の兆しはあった。それがどのような過程を経て駄目になっていったのか、それを検証する必要がある。安倍政権は今のところ至って順調だが、大胆な金融緩和と諸外国の活況だけが頼りの経済政策はいつか行き詰るに違いない。そのとき、私たちの前に選択肢がないようでは、日本社会は危機に瀕してしまう。麻生のナチス発言が強ち冗談でもなかったということもなりかねない。筆者を含めて「相変わらずだなあ」などと呑気に構えていないで、真摯に日本の未来を考えていく必要がある。


(H25/8/3記)


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