近頃、午後になるとよく雨が降る。そんな訳で外出には傘を持っていくことにしている。鞄に収まるので大抵は折り畳み傘にする。 しかし折り畳み傘には難点がある。雨が降ると、店の前には濡れた傘を仕舞うビニール袋が用意される。ところが折り畳み傘は畳むと縦に短くなる分、横幅が普通の傘より太くなるので、ビニール袋に入らない。無理やり収めようとすると手や上着の袖がびしょ濡れになる。しかも傘を差し込むと自動的にビニールに収まる傘入れ機?が置いてある店ではお手上げで、周囲に気を遣い雨水を払って身体に押し付けるようにして傘を抱えていく羽目になる。すると当然のことながら服に水が浸み込み不快なことこの上ない。 たぶん同じような苦労をしている者は私以外にもたくさんいると思うが、適当な小物が見当たらない。店も用意しているところはほとんどない。折り畳み傘を購入した時に収納用の袋が付いてくるから、それを持ち運べばよいのだが、たいていは忘れそのうち袋がどこか行ってしまう。たとえ袋を持っていっても小さすぎて役立たないことが多い。それに最初から袋が付いていない折り畳み傘もある。 それにしても、私の頭では思い付かないが、ちょっとした工夫でこの問題は解決できるような気がする。そして、それはヒット商品になるに違いない。 半世紀前、私が子供だった頃の日本ならば、この一寸した工夫で、「なるほど、そういう手があったか」と思わず唸ってしまうような発明品が生まれていたような気がする。今では当たり前になったワンタッチ傘がよいお手本だ。 今の日本は豊かになって、お金を出せばたいていのことは楽にできるようになった。その分、知恵を働かせ、機転を利かせて身近な問題を解決する能力は衰えた。 近年、歴代の内閣はそれぞれに成長戦略を描いて日本の活力を取り戻そうと躍起になってきたが上手くいっていない。その原因の一つが、この工夫して問題を解決する能力の衰退にあるように思われる。かつての日本は物真似ばかりと海外から嘲笑され非難されたが、実際は小さな工夫を積み重ねることで生まれる創造力が極めて高かった。だからこそ一時期、日本製品が様々な分野で市場をリードすることになった。ところが最近、日本企業は多くの分野で市場からの撤退を余儀なくされている。その原因はコスト高ではなく工夫する能力が衰えたことにある。その一方で新興国は工夫する能力が高い。一時期低迷していた欧米各国も工夫する能力を持ち直してきた。日本だけが取り残されている。これではどんな成長戦略も上手くいかない。不器用な私が折り畳み傘で難儀をしないように、誰が早く工夫してもらいたい。それが日本復活の早道になる。 了
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