☆ 人間、楽をしたい ☆


 日本人は勤勉だと言われるが、自分のことを考える限り怪しい。周囲に「遅くまで働いているね」と言われることがたまにあるが、仕事が遅いのでやむなく退社が遅くなることがあるに過ぎない。そうでなければ早く退社するし(ただし早く帰宅する訳ではない)、遅くまで残っているときも、いかにして仕事を早く終わらせるかを考えてばかりいる。

 他の者も大差はない(と思う)。日本は会社人間が多いが、それは仕事が楽しいからとか、職務への責任感からと言うよりも、会社に友達が多いからだ。勉強が嫌いでも、友達がたくさんいて、教師が好人物ならば、学校は楽しい。それと同じだ。たぶん外国でも同じだろう。

 だから人は楽をしてお金を手に入れようとする。バブルが発生する原因がここにある。日銀は経済活性化のために大胆な金融緩和を実施、市場に莫大な資金を提供している。これに応じて、企業が借金して生産を増やし、売り上げ・利益が増え、従業員の賃金が増えて消費が活性化すればよいのだが、なかなかそうはいかない。

 楽をして儲けたいから、折角の資金が金融や証券市場に向かう。元手があれば働いて1千万円を得るよりも、金融取引で1千万円稼ぐ方が楽だ。しかも現行の税制では金融所得の方が勤労所得よりも税率が安いのだから、余計金融市場に向かう。

 リーマンショックの後、世界各国で金融自由化に一定の歯止めを掛ける必要があるという議論が続出した。しかし昨今の株高でそういう声はいつの間にか消えた。人は楽して儲けたいし、自由主義社会ではそれを制限する術はない。しかも金融緩和が功を奏するためには、ある程度は資金が金融証券市場に向かう必要がある。

 人が楽をしたい限り、金融緩和はバブルを必然的に引き起こす。特に高齢者は勤労で収入を得ることが難しいから、貯金がある者は株に手を出したくなる。アベノミクスは評価が高いが、それが本当に成功するかは、「働くことは楽しい、楽して儲けるよりも楽しい」と人々に思わせることができるかどうかに掛かっている。だが容易ではない。


(H25/5/12記)


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