☆ 隕石 ☆


 2月15日、ロシアに隕石が落下した。NASAの発表によると、直径17メートル、重さ1万トン、秒速35キロで大気圏に突入、上空数十キロのところで爆発したと推測されている。また破片が数か所で発見されている。

 落下地点が人口密集地でなかったため負傷者は千人を超えたが幸い死者はでなかった。この規模の隕石が東京都心上空に突入し爆発したら、都市機能はマヒし死者も多数でた可能性がある。恐ろしいことだ。

 6550万年前、白亜紀の終わりに巨大隕石が地球に衝突し、それが原因で恐竜を始めとして多数の生物種が絶滅したという説がある。白亜紀と新生代第三紀の境界層から大量のイリジウムが検出され、メキシコのユカタン半島に巨大隕石の衝突の痕跡が発見されたことから、この説を多くの学者が支持し今では通説になっている。この時の隕石は、直径10キロメートル、秒速50キロメートルで地球に衝突したと言われる。この規模の大きさになると大気中で消滅することはなく地上にそのまま到達する。その衝突エネルギーは世界最大の水爆の千万倍に達する。世界中の核兵器を一斉に爆発させたときの数千倍の爆発力が生じる。落下地点は勿論、周辺数百キロが瞬時に壊滅し、地球全体が巨大地震と巨大津波に襲われ、熱波で地球全体に火災が発生する。地震のマグニチュードは12から14で、東日本大震災の数万倍から数億倍の規模になる。津波は最大千メートルを超え世界中の海岸地域が水に浸かる。仮に日本近海に落下したら、二千メートルを超える山岳地帯を除くと全て水に浸かることになる。正に、この世の終わりだ。さらに、この衝撃から逃れることが出来ても、大気中に広がった灰で太陽光は遮られ大量の植物が枯れ死する。植物が枯れれば、草食獣が飢死し、草食獣に頼る肉食獣も餓死する。こうして、巨大隕石衝突が引き金になって多くの種が絶滅した。生き残ったのは、バクテリアなどの微生物と、海に暮らす生物、被害が比較的小さかった地域の陸生植物と小動物だけだった。その中で、新たなニッチを獲得した哺乳類が爆発的に進化して地球生態系で大きな役割を占めるようになり人類の進化に繋がった。

 こうして考えると、6550万年前の巨大隕石衝突は、文明への道を切り開く事件だったとも言える。だが、いま、この規模の巨大隕石が地球に衝突したらどうなるだろう。現在の技術では衝突を回避することはできない。10キロ程度の隕石ならば、相当遠方に位置するときから観測することはできる。しかし、それが地球衝突の軌道に乗っていると分かったとしても、それを回避する方法はない。核兵器を使って破壊することも考えられるが、地上に影響がない遠方で破壊することはできない。破壊できるとしても、その時にはすでに地球に大きく接近しており地上へ壊滅的な打撃を与えることは避けられない。

 いま6550万年前と同じ規模の隕石衝突が起きるとしたら、私たちにできることは罪を悔い祈ることだけだ。文明を維持できる可能性はほとんどない。人口は激減し、人類は原始時代からやり直さなければならない。しかし文明という要塞がないと、体毛が薄く寒暖の変化に弱く飢餓に耐える能力が低い人類が生き残れるとは思えない。つまり人類と文明は終る。

 そんな巨大隕石が地球に衝突する確率は極めて低い。だが6550万年前だけではなく、幾度となく過去に巨大隕石が衝突したと推測されている。火星と木星の間には莫大な数の大小さまざまな小惑星が存在し、そこからカオス的な擾乱を経て小惑星が飛び出してくる。その一つが、将来、地球に衝突する可能性はゼロではない。彗星が地球に衝突する可能性だってある。人類は文明を築き上げることで天敵がいなくなったと言われるが、たとえ地上に天敵がいなくなったとしても(注)、宇宙には人類を簡単に滅ぼすことができる天敵がたくさん存在する。星空は美しいが、必ずしも人類に優しい訳ではないようだ。
(注)実際は地上には、強毒ウィルス、バクテリアなど人類の天敵が多数潜んでいる。そもそも人類にとって最大の天敵は、人類そのものだ。


(H25/2/16記)


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