待ちに待ったこの日が来た。そう、5月4日、地元神宮球場で、わがヤクルトスワローズの宮本慎也が2千本安打を達成した。大学、社会人を経てプロ入りした野手では古田に続く快挙だ。おめでとう。 入団当初、宮本は、守備はすでに超一流だったが、打つ方はさっぱりだった。打率は低く、いくら守備が良くともこれでは守備要員にしかならないと思った。事実、入団した95年は出場試合数67、57打席11安打、打率2割2分という結果に終わっている。まさに守備要員でしかなかった。当時の印象としては、大学社会人を経ての入団、年齢も24ということもあり、これ以上伸びる器とは思えなかった。 しかし、宮本は、そんな私の無責任な予想を物の見事に裏切ってくれた。精進を重ねて打力が向上、97年のスワローズ日本一のシーズンには遊撃手としてレギュラーの座を獲得し、初のゴールデングラブ賞を手にする。打率も2割8分台にまで上がった。さらに、01年のシーズンは、打率こそ2割7分に終わったものの、安定した守備力だけではなく、日本歴代最高の67犠打を記録し、日本一に大きく貢献した。日本シリーズでもMVPは古田に譲ったものの、多くの評論家から「日本一の真の立役者は宮本」という高い評価を受けた。事実、ピンチに立った投手を励まし、適切な守備体制を敷いて幾度ものピンチを救ったのは古田というよりも宮本だった。 それでも、私は、宮本の力を未だみくびっていた。08年、1500安打を放ったとき、ネットでは「頑張れ、宮本、絶対に2千本打てる」という応援メッセージが多数寄せられていた。しかし、当時すでに38になる宮本には2千本は無理と、またしても勝手に判断した。 そんな私も昨年の宮本の活躍ぶりを目にして、2千本は無理という判断を改めた。それでも、その日が現実になってみると万感の思いがある。しかも日頃は空席が目立つ神宮球場の広島戦を超満員にし、たくさんのファンを前に2千本を達成したことは、本人はもちろんのこと、ファンにとっても、この上ない喜びだ。 宮本は私の予想を裏切り続けた。しかし、予想を裏切られてこんなに嬉しかったことはない。2千本安打を花道に引退、こんな寂しい予感がしないではない。しかし、次はぜひ、この私のいつもながらのけしからん予想を裏切ってもらいたい。 了
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