☆ それで善いのか ☆


 石原都知事が尖閣諸島を東京都が買うと言い出した。耳を疑った。「私が自分で買う」と言ったのだと思ったが、何回聞いても東京都が買うと言っているようにしか聞こえない。

 石原都知事は金持ち(のはず)だ。戦後一貫して日本を代表する愛国主義者だった(はずだ)。都知事を辞め、私財を擲ち、島を買い、自衛隊を誘致して愛する日本を守る、賛同はしかねるが、それはそれで一貫した信念だと評価してもよい。

 ところが東京都の金を購入費に充てるという。冗談じゃない。そんな独り善がりな思いに税金を注ぎ込まれたのでは、堪ったものではない。都知事の行動を支持する向きもあるようだが、どうかしている。私は支持しない。それどころか都に収めた税金を返してもらうために行政訴訟でも起こしたい気分だ。

 しかし、都知事の本当の狙いは違うところにあるようにも思える。石原宣言に刺激されてか、官房長官が国で購入することを検討すると言い出した。民主党が本気になれば、おそらく自民党も賛成する。こういう流れを作ることが狙いだったとも考えられる。

 石原慎太郎は信念の人という見方が強いが、どうして、どうして、実はなかなかの策士だと聞く。米中だけではなく、どこの国に対しても日本の立場をしっかりと主張できない政府の態度に業を煮やして、活を入れることが本当の目的なのかもしれない。だが、それで善いのだろうか。

 経済発展と強大な軍事力を背景にしばしば強硬な外交を展開する中国に安易に譲歩する訳にはいかない。しかし、こんなやり方で事態が改善するはずがない。日本は平和憲法を制定し、軍事力を外交に用いることを永遠に放棄した。都知事には気に食わないかもしれないが、多くの日本人はそれを支持している。こういう環境下で、対立を煽るような遣り方は日本のためにはならない。平和を国是とする日本には日本なりのもっとしなやかで、したたかな外交があるはずだ。

 石原慎太郎の人気は高い。彼の考えと行動が世論の多数派になりかねない。この先どうなるか予想が付かないが、それが本当に日本のためになるのか、皆よく考えて欲しい。


(H24/4/18記)


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