☆ プロ野球開幕 ☆


 プロ野球が開幕した。ヤクルトスワローズは青木の渡米、由規の離脱、宮本の衰え、優勝を争った昨年のリリーフ陣の疲れ、など多くの不安材料を抱えながらの開幕だが、新戦力の台頭を期待して今年も応援したい。

 しかし、ダルビッシュを筆頭に和田、川崎、青木と、日本を代表する選手たちが去ったことには一抹の寂しさが伴う。今の日本のプロ球界で、「彼こそミスタープロ野球」と呼べる選手は見当たらない。ノーヒットノーランを達成した前田健、楽天の田中、今年躍進が期待される斎藤など投手には逸材が揃うが、野手にこれと言った選手が見当たらない。日本一のスラッガー西武の中村、昨年首位打者を獲った巨人の長野、ソフトバンクの内川当たりが脳裏に浮かぶが、長野が球界の代表と呼ばれる選手になれるかどうかは今年、来年に掛かる。凄い選手になるだろうと思っていた坂本は伸び悩んでおり、1年や2年の活躍だけでは判断できない。内川は実績こそ素晴らしいが怪我が多く、又、ややスター性に欠ける。中日の森野や阪神の鳥谷なども同じタイプに属する。中村は素晴らしい選手で、しかも楽しいキャラクターだが、スターと呼ばれるタイプではない。

 1対0という投手戦もそれなりに見応えはある。しかし、こういうサッカー並みの点数の試合が続くとやはり詰らない。球場まで足を運んで1対0は正直寂しい。これなら家で観戦していた方が良かったと後悔することもある。球界を代表する投手同士の投げ合いで共に完投というのであれば、それなりにわくわくしながら観戦できるが、さほど凄いとも思えない先発投手が途中まで1点以内で凌ぎ、6回から両軍ともリリーフ投手が出てきて0点に抑える、結局1対0で終わり、などとなると何の印象も残らない。特に贔屓のチームが負けると無言のご帰宅となってしまう。

 先発・中継ぎ・抑えのシステムが確立して、優秀な投手が後ろに回るようになり、後半点が入りにくくなった。かつては筋書きのないドラマなどと呼ばれ、9回の大逆転が野球の見せ場だったが、9回の大逆転はめっきり減った。特に中日は7回まで勝っていれば、ほぼ100%の確率で逃げ切る。正に中日は現代野球の申し子とも言うべき存在で、落合の退陣で少しは弱くなるかと思ったが少しも弱くならず、川上の復帰もありセリーグ3連覇の可能性が高い。すでに日本シリーズに思いを馳せている中日ファンも少なくないだろう。しかし、中日ファンを別にすれば、今の中日の野球は、ONのいないV9巨人という感じで面白いとは言い難い。

 いずれにしろ、投手の分業体制が確立し、なおかつ(飛ばない)統一球の採用もあり、投手力に優る球団の優位が確立し、その分、打者の成績が下がった。しかし、終盤の逆転劇の急減と投手の優位は、プロ野球にとって余り好ましい傾向ではない。今年はオリンピックイヤーで、すでに人々の目は予選を含めてオリンピックへ向いており、オリンピック競技ではない野球への関心は著しく下がっている。みな、気が付いたら、すでに両リーグとも優勝チームが決まっていた、などということにもなりかねない。

 だからと言って安易に打者有利に戻す訳にはいかない。統一球採用の背景には、打ち取ったはずの打球が、スタンドインしたり、外野手の頭を超えたりしたという現実があった。特に狭い東京ドームや神宮などでは、それが投手寿命を縮めた。安易に元に戻せば元の黙阿弥になる。勝利を目指して試合をする以上、勝つために有効な投手の分業体制が変わることはない。飛ばないボール、優秀なリリーフ陣という高い壁を前提に、それを超える技術を打撃陣に求めたい。大リーグでは、チーム数と試合数が多いこともあるが、点がたくさん入り、逆転も日常茶飯事だ。打者が技術を磨けば、筋書きのない楽しいドラマを展開できるようになるはずだ。野手の諸君には是非頑張ってもらいたい。


(H24/4/8記)


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