☆ 想定外? ☆


 今年最もよく使われた言葉は「想定外」ではないだろうか。東日本大震災でも、原発事故でも、税制改革でも、「想定外」という言葉を嫌になるほど耳にした。大体において、「想定外」は言い訳に使われるから、これは当局や関係者が言い訳せざるを得ない事態が頻発したことを物語っている。尤も、毎日「予想外でした」と言い訳している私のような者が、当局や関係者を非難できる立場ではない。

 しかし、ひとこと言わせてもらうと、「想定外」と「予想外」は意味が違う。「想定外」は、きちんと問題点を考え対策を取っていたが、想定を超えていたために十分な対応が取れなかったことを意味する。もう少し詳しく言うとこうなる。「想定外」という言葉は、事前に一定の事態を想定し、必要な検討と対策を十分に実施したことを前提に使用される。このことは「想定外の事態」も考慮したことを意味する。なぜなら、想定外の事態を考慮していなければ、想定内と想定外の境界線が引けず、そもそも何らかの想定をしたとは言えないからだ。つまり、考慮はしたが、そこまでの対応は不要と判断した、しかもこの判断は常識的に言って正しかったことを、この言葉は語っている。だから、不要という判断が結果的には正しくなかったとは言え、遣るべきことは遣ったということがこの言葉では暗に主張されている。つまり「想定外」という言葉を使うことは、「私には責任はない」ということを(暗に)主張していることになる。一方、「予想外」は、一般的に、全然何も考えていなかったということを意味する。これは、次には「そんなことも予想できなかったのか!(怒)」と叱られることが想定されている。そして叱られたら素直に謝罪する。端から自分の非を認めたうえで、言い訳をしている。

 果たして、一連の事態は当局や関係者にとって、本当に「想定外」だったのだろうか。4枚のプレートが鬩ぎ合う日本列島近辺は、どこで大地震が起きても不思議ではない。東海地震ばかりに目が奪われていたのは、やはり浅はかだったと思う。どんなに安全対策を施しても、人間の作る物が絶対安全であることはありえない。事故確率0がありえないばかりか、天文学的に低い確率だということもありえない。寧ろ、事故は起きる、だから事故が起きたときの対策を考えておくというのが正しい。それを怠り、非常用のロボットも配備されていなかった。東日本大震災や原発事故だけではない。EUの財政危機も、日本の膨らむ一方の財政赤字も想定できた。政権交代があったからと言って、「政権の座に就くまで何も知りませんでした」では幾らなんでも通らない。要するに、ほとんど全てが「想定外」ではなく、ただ「予想外」だったのだ。

 人間だから過ちを犯す。「予想外」はなくならない。だからこそ、同じ過ちを繰り返さないように対策を取り、注意することが大切になる。だが、そのためには、まず「想定外」などと責任逃れをするのを止めなくてはいけない。特に責任ある地位に就く者は「想定外」という言葉を使わないようにする必要がある。ちなみに、私も来年は「予想外だった」という言い訳はしないことにした。「全然、考えていませんでした。以後注意します。御免なさい。」と謝罪するつもりだ。皆も見習ってほしい。


(H23/12/30記)


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