☆ さようなら、西本監督 ☆


 大毎、阪急、近鉄を率いてリーグ制覇を成し遂げた名将西本さんが25日お亡くなりになった。享年91歳。心からご冥福をお祈りする。

 三原、水原、鶴岡、川上、森、野村、落合、その他、日本プロ球界で名監督と呼ばれる者は少なくないが、西本さんが最高だと思っている。川上巨人、森西武は確かに物凄く強かった。川上、森がそれに貢献したことは言うまでもない。だが、とにかく両チームは選手層がずば抜けていた。王、長嶋という3冠王を狙える選手2人が3番、4番に座るV9巨人。秋山、清原、デストラーデ、おそらく日本プロ野球界史上最強のクリーンナップトリオの西武。それに加えて、先発、抑え共に盤石の投手陣に堅実な守備、抜け目のない走塁。強いはずだ。他の監督だったらあれほどの成績は残せなかったかもしれないが、それでも日本シリーズの常連にはなっていた。

 弱いチームを強くする。それが本当の名監督だと思う。その意味で、最高の名監督として、三原、西本、野村、3人の名が浮かぶ。しかし、三原は、三原マジックの名の通り、独特の指導法で、短期間で成果を上げるが、地力を付けて常勝チームを作るというところには至っていない。勝つチームを作ることには成功したが、強いチームを育てることには成功していない。野村はヤクルトでは成功したが、阪神では失敗している。楽天でも成功したとは言い難い。その点、就任以前はパリーグのお荷物と言われた阪急と近鉄をいずれも常勝チームに導いた西本監督の手腕には目を見張らされる。負けることが当り前になっていたチームの意識を変革し勝利への執念を植え付け、若い無名の選手を付きっきりの指導で一流選手に育て上げ、地力のある真に強いチームを作り上げる。二つの弱小チームでそれに成功した西本さんこそが、最高の名監督と称されるに相応しい。

 日本シリーズ出場8回、1回も勝てなかったことから、短期決戦が不得意な監督と言われることもある。しかし、どちらか一方が4勝すれば終わる日本シリーズは、圧倒的に運に左右され、監督の手腕は関係ない。巧みな采配が賞賛される落合も5回日本シリーズに進出して1回しか勝っていない。西本監督の場合、阪急時代は最強巨人が相手でそもそも分が悪く、近鉄時代は広島との2年連続の日本シリーズがいずれも3勝4敗、最後に勝利の女神が微笑んだのが広島だったというに過ぎない。要するに、西本監督は日本シリーズでは運に恵まれなかったというだけのことで、采配が拙かった訳ではない。

 時代は変わり、選手の育成方法は大きく変わった。時には愛の鞭が飛んだ西本さんのような監督はもういない。しかし、西本さんの野球に対する情熱、選手への愛情、これは決して忘れることはできない。指導のスタイルが変わろうとも、この二つが何よりも大切であることに変わりはない。これからも西本監督と同じ志を持つ名監督の登場を期待したい。


(H23/11/26記)


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