☆ 安定と不安定〜首相交代の意義? ☆


 地球の大気は不安定だ。台風、ハリケーン、豪雨、エルニーニョ、様々な擾乱がひっきりなしに発生している。

 それでも、(北半球では)春は暖かく、夏は暑く、秋は涼しく、冬は寒く、この四季のパターンが崩れることはない。大気は全体的には安定している。ただ短期的に擾乱が起き大きな被害をもたらす。

 およそ環境は、それが自然的なものであれ、社会的なものであれ、安定と不安定のバランスで成り立っている。だからこそ、人という存在が、さらには生命体がこの地球上に誕生し存続している。不安定の連続ならば生命は存在できない。かと言って、安定で変化がなければ熱平衡状態に近づきやはり生命は存在できない。ほぼ定常状態で、不規則にときどき大きな変動が起きる。こういう状態で生命は誕生し、そして進化した。安定が常に好ましいと言う訳ではない。時には進化のために、変化が、それも大きな変化が必要となる。ただし、大変化がいつも起きていたのでは、生命体は適応できずに死滅する。だから基本的には環境が概ね安定していることが望ましいことには変わりはない。

 人間社会も同じで、好不況の波が月単位で押し寄せ、大儲けをして狂喜乱舞する者がいて、一方で夜逃げする者が後を絶たないなどという状況になったら、たとえ短期的には活況を賑わせても、すぐに暴動が起きて破綻する。

 そう考えると、日本の現状はさほど悪くないのかもしれない。暴動は起きていない。起きていないどころか、起きる気配すらない。東日本大震災、福島原発事故という大災害・人災に見舞われたにも拘わらず。不平不満は数限りなくあるが、暴力で解決しようと思うほどのことではないのだろう。総じて言えば、日本社会は安定している。そして、その安定の上に、適度に擾乱が起きる。その典型が毎年のように繰り返される首相交代だ。毎年首相交代が起きる政治を危惧する者は多い。だが考えようによっては、首相交代は適度な刺激になり、日本社会が衰退しないように守ってくれていると言える。実際、メディアだけではなく一般市民も大いに楽しんでいるのではないか。だとすれば、何も目くじらを立てることはない。外国からは冷笑されるが、それでも外交の継続性が保たれれば諸外国との関係を良好に保つことができる。笑われることくらい、どうということはない。各国のコメディアンの題材になって嬉しいではないか。

 ただ、毎年繰り返される首相交代が大進化へと導くものでないことは確かだ。小市民的な生活が自堕落へと転落しないように支えているだけだ。やはり、このままでは日本の未来は険しい。それでも、毎年首相交代がある方がまだマシだとしたら、如何にも寂しい。


(H23/9/21記)


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