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髭は薄い方だが、それでも二日に一度は剃らないと（元々見苦しい顔が益々）見苦しくなる。それで已む無くシェーバーで髭を剃るのだが、面倒極まりない。頭髪がすっかり薄くなったと言うのに、髭は若い頃同様に伸びる。何故、髭など生えるのだろう。 頭髪は理解できる。頭は人間の身体で最も重要な器官で、二足歩行の宿命で石など落下物が当たる危険性も高い。だから保護のために頭髪が生える。陰毛も分かる。生殖器は異性を刺激する。特に視覚で興奮する男（オス）は女（メス）のそれにはことさら弱い。だから陰毛で隠すことで無用な諍いを避けることができる。脚や腕の毛も何となく分かる。怪我をしやすい場所だからだ。しかし髭は何のためにあるのかよく分からない。食事をしたときに汚れやすく病原菌の住処になりそうな気がする。いや逆で病原菌を防ぐ役目をしているのだという意見もある。だが、それでは女に髭がほとんど生えない理由が説明付かない。 女の乳房が膨らむのは男を性的に魅了し子孫を残すためだと言われる。乳房の大きさと母乳の量は無関係で、乳房が膨らむことは子育てとは関係がない。だとすると男を惹きつけることが、乳房が膨らむ理由だという説には説得力がある。 類推するに、髭も同じ理由で生えるのではないだろうか。服を着て自分の体型を誤魔化すことができるようになった男は自分の身体そのもので女を魅了することができなくなった。そこで女のシンボルが豊かな乳房であるように、男のシンボルが髭になったのではないだろうか。事実１９世紀までの文学作品では女が男の髭に魅力を感じる描写をよく見かける。 最近は髭を伸ばす男は減っている。女も男の髭に魅了されることは少ないようだ。小説にも髭の描写を見ることは珍しくなった。時代と共に人間の魅力は変わる。それに連れて体型も変わっていく。最近の若い男は髭が薄いと言われる。これは女の好みの変化と連動していると推測される。濃い髭が魅力ではなくなり自然と男の髭も薄くなってきたに違いない。 それでも今日も髭が伸びている。女に縁がない男には進化論は関係ないようだ。 了
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