☆ 神保町古書店街は生き残れるか ☆


 文系から理系まで幅広いジャンルの専門書を扱うことでお馴染みだった古書店「巌松堂図書」が11月22日に閉店した。法律、文学、哲学、経済、数学、物理学、工学あらゆる分野の古書が手に入る巌松堂図書は筆者にとって貴重な存在だった。近くの古書店と比べても客の入りは悪くなかったと思っていたので驚き、そしてがっかりした。

 土日に宿直勤務をした関係で翌月曜日が休日になったので、雨の中、神保町まで足をのばした。天気が悪く平日ということもあってか、どの店も閑散としている。店主が馴染みの客らしき人物と話しこんでいる店もあった。繁盛しているのは三省堂書店本店くらいで、後は、新刊書店、古書店おしなべて客の入りが悪い。日本有数、世界最大という声もある神保町古書店街はこの先も生き残れるのだろうか。

 三省堂書店神保町本店では、12月15日から店頭でオンデマンド出版が開始される。当面は洋書のみで古書店への影響はなさそうだが、たとえば絶版だが電子化された書籍が大型新刊書店の店頭で簡単に手に入るようになると影響は大きい。そうなると、大型書店、それも三省堂、紀伊国屋、ジュンク堂など全国展開する大型書店だけが市場を独占し、古書もブックオフなどのチェーン店だけが生き残るという事態も想定される。そうなれば古書店街の存続も危うくなる。

 技術の進歩とライフスタイルの変化で、街が変貌することは避けられない。しかし長きに亘って日本の学術、文化の中心の一角を担ってきた神保町古書店街がこのまま廃れていくようでは、日本文化のアイデンティティの存続も危うくなってしまう。そして、それは日本人が心の拠り所を失うことを意味する。時代に抗うことは容易ではないが、神保町古書店街は守るに値する。「愛国」とは軍備を増強し外国を威嚇することではない。文化のアイデンティティを守り育てることこそ真の意味での「愛国」なのだ。足繁く神保町に出掛け古書を購入し、古書店街がいつまでも賑わうように微力ながら協力したい。


(H22/12/14記)


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