厚生労働省が10月20日、日本の「相対的貧困率」を報道発表した。新聞によると相対的貧困率の発表は初めてのことだと言う。ある意味で画期的なことであり、その点では評価できる。 しかし同省のHPに公開されている報道発表資料を見て驚いた。表書きにいきなりこう書いてある。「厚生労働大臣のご指示により、OECDが発表しているものと同様の計算方法で、我が国の相対的貧困率及び子どもの相対的貧困率を算出しました。最新の相対的貧困率は、2007年の調査で15.7%、子どもの相対的貧困率は14.2%。」(厚生労働省HP報道発表資料2009年10月より引用。10月21日22時に閲覧。) 官僚の意識からすれば大臣はお客様なのかもしれないが、厚生労働省にとって大臣と言えば身内だ。身内に対して「ご指示により」はないだろう。敬語の使い方が間違っている。「指示により」が正しい。そもそも、「大臣の指示により」と書く必要がどこにあるのだ。「これからの厚生労働行政のあるべき姿を国民の皆様と共に考えていくための参考資料として、xxxxを用いて、相対的貧困率の数値を算出、公表することに致しました。」たとえばこんな書きぶりにすれば十分だろう。それなのに、これでは、本当はこんな資料は公表したくなかったのだが、目立ちたがりの新大臣に強要され已む無く公表したとでも言わんばかりではないか。なるほど、そうだとすれば、敬語の使い方を間違えているのは合点がいく。間違えたのではなく、わざと嫌味たらたらで「ご指示」などと書いた訳だ。 しかし、そんな子供じみた真似をするほど、官僚が愚かしいはずはない。単純な見落としなのだろう。だが大臣も報道発表資料くらい見ていないのだろうか。大臣が見る暇がないのなら、政務官や秘書がチェックして正すべきだろう。それとも、まさかとは思うが、「ご指示により」という文言を見て、「よし、よし、良い子だ」とでもほくそ笑んでいるのではあるまいな。 重箱の隅を突くようなことはしたくない。誰でも単純な間違いをする。だがPDFファイルの本文を見ても、数字と算定方法が羅列されているだけで、漠然と貧富の格差が拡大していることは読み取れるが、それ以上のことはさっぱり分からない。深い分析をすることで却って読者を混乱させ誤った認識を与えることは多々あることだが、もう少し分かりやすい丁寧な説明があってしかるべきだろう。何も急いで公表する必要があるものではないのだから、専門家も交えてきちんとした分析結果を発表するべきだったように思える。 いずれにしろ、漢字の読み間違えを連発した前首相と言い、どうも日本社会の中枢に位置している人たちの知的水準が落ちているような気がしてならない。日本社会の指導層の皆さまには、日本の進路を間違えないように日々研鑽して頂くことを心からお願いする。 了
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