昨年「誕生日は嬉しい」というエッセイを書いたが、それから早1年が経ち昨日めでたく?54歳になった。社会人になってから3月末で丸30年、何だかんだ言っても良く無事で過ごしてきたものだと思う。 昨年同様、某プロバイダから誕生祝いのメールが届く。「こういうサービスは嬉しいもので該当のプロバイダは解約対象から外した」と昨年は書いたが、どっこい解約はしなかったものの、つい先日、料金を安いコースに変更した。懐具合は昨年と余り変わっていないが、景気の悪さが心理的に影響しているのだろうか。いや歳を重ねて将来への不安が膨らんできたというのが本音だ。実際、以前は一向に気にならなかった年金のことが気になりだした。昭和30年生まれで61歳から厚生年金が受給できる。勤続年数から企業年金も受け取る権利がある。だが両方合わせて幾らもらえるのか良く分からない。大体の想像はつくとは言え、流動的な政治経済状況を考えると現時点での想定はあまり当てにならない。それに、一人身の気楽さも手伝い、何か自活できる道を見つけ退職し自由業に就きたいという思いも強い。だがその場合は年金が幾らになるのか見当が付かない。そもそも年金支給額は今から確定しているわけではなく、厚生年金は61になる時点、企業年金は退職時点まで確定しない。だから計算式を調べて計算しても不確定要素が多くて確かな算定はできない。 いったいいくらあれば暮らしていけるだろう。所有している資産や家族構成により様々だが、夫婦二人であれば月に30万円台後半から40万円くらいあればゆとりのある生活ができるとどこかに書いてあった。結婚したことはないが実感としてこの数字は納得できる。では独身者はどうだろう。夫婦二人よりは楽なはずだが、家事や病気になったときのことを考えると夫婦二人よりも安上がりに済むとは限らない。やはり独身者でもこの程度の金額が必要だと考えた方が良い。しかし月40万円となると年間480万円、90まで生きるとして、あと36年。合計金額は1億7千万円強。どこにそんな金があるのだ!少なくともどう計算しても、企業年金と厚生年金だけでは全然足りない。しかもこの数字は物価上昇分を加味していない。世界一の財政赤字を誇る我が国のこと、いずれ政府はインフレを狙ってくる。しかも消費税率の引上げはほとんど確実だ。優しい日本国民はお国も大変だからと消費税率引上げを容認している。たとえば2%程度のインフレを想定すると36年間に必要な金額は2億5千万円に跳ね上がる。これに消費税率の上乗せ分が追加される。前に説明した通り消費税は実質的には消費者がすべて負担する訳ではなく企業側も負担することになるとは言え、この数字に消費者負担率を加味したら、もう話しにならない。しかも90までに死ぬとは限らない。政治経済に明るいお役人様たちが「渡り」に固執する理由がよく分かる。 こうして、就職から30年、これを機に独立して楽しい第二の人生という夢は1日で崩れ去った。とは言え悲観する必要はない。急激な高齢化が進む日本で高齢者を見捨てることは政府にはできない。年金支給額の引上げ、消費税課税対象品目の限定など高齢者に優しい政策を実施するに決まっている。さもないと政権は維持できない。そもそも月に40万円というのが贅沢すぎる。若年層はもっと少ない収入で育児をしながら生活している。節約し金を使わずに人生を楽しむ術を身に付ければ大丈夫。筆者の場合、幸い、読書と散歩、子供の頃から好きだった音楽があればまったく退屈しないからコスト削減は十分に可能だ。後は健康に留意すればよい。そこに「大丈夫、そんなに長生きしない」と笑う声が聞こえてくる。だとすると、そろそろ我が道を行くか。ま、あれこれ考えるのがまた楽し、やはり誕生日は良いものだ。 了
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