復刊を希望する書籍の登録と賛成投票をするサイト「復刊ドットコム」からメールが届いた。ワルラス「純粋経済学要論」が1月に復刊するとの連絡だ。 前にも同じ類のことを言った記憶があるが、また泣いた、いや今度こそ本当に泣いた。実は3か月ほど前に馴染みの古書店で1万2千6百円を叩いて古書を購入したのだ。しかもまだ1ページも読んでいない。それが間もなく税込6300円で新本が発行されると言う。その差は6300円、まさに倍だ。古書を購入する前に岩波書店に電話で問い合わせて復刊の予定はないかと尋ねた。ずるいではないか、なぜ復刊するなら復刊するとそのとき言ってくれなかったのだ。候補にくらい上がっていただろう。さらに衝撃を受けたのが紀伊國屋書店新宿本店だ。すでに店頭に同書が並んでいる。アマゾンを検索しても在庫あり、すぐにお届けと記されている。何のことはない1月ではなく12月には復刊していたのだ。 だが後の祭り。今さら古書店に本を返してお金を戻してもらうわけにはいかない。岩波書店も別に嘘を言った訳ではない。嘘を言っても書店は一文の得にもならない。もうすぐ復刊するから古書店で買わない方がよいですよ、と言った方が儲かるのだ。いくら進歩派と言っても岩波書店も私企業だ、わざわざ売り上げを減らす真似をするはずがない。問い合わせをした時にはまだ決まっておらず、1月(12月?)に復刊しますとは答えられなかったのだろう。こうなると泣き寝入りしかない。こういう時に泣き寝入りという言葉を使ってよいのかどうか知らないが。 前回同様1万2千6百円で購入した時には限界効用は1万2千6百円以上あったのだから、けっして損した訳ではない。1月に復刊することは予想できず、しかも復刊していなければ図書館に一々調べに行かなくてはならなかったのだから、決して損した訳ではない。そう自分の心に言い聞かせるのだが、やはり愚痴が出る。まだ一度も読んでいない。1月に購入しても同じだったのだ。結局人は愚かな存在だ、いや、少なくとも私は愚かな存在だ、先がまるで見えていない。これまで無駄なものをたくさん買ってきたし、また買ってしまった。これからも買いそうな気がする。だがもしかしたら私のような人間がいるからこそ経済が成り立っているのかもしれない。私はそういう意味で社会に貢献しているのだ。 そうは言っても、やはり6300円は痛い。友人と2回飲みに行けた。いや結局飲みには行くのだが。もし私が破産したらワルラスの所為だ。ケインズの弟子の経済学者ロビンソンはこう言ったそうだ。「経済学を学ぶ目的は経済学者に騙されないようにするためである。」こうなったら意地でも「純粋経済学要論」を読みとおす!しかし買う前に読んでおけば良かった。そうしたら騙されなかったのに。とほほ。 了
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