☆ さようなら飯島愛さん ☆


 元タレントの飯島愛さんが12月24日亡くなった。享年36歳。まだ若く、これからという歳なのに残念だ。心からご冥福を祈りたい。

 連絡が取れずに心配した知人の女性が自宅のマンションを訪れたときにはすでに亡くなっていたという。AV女優、人気タレント、ベストセラー作家、体調不良で昨年4月に引退、20で芸能界デビューしてから彼女は常に世間の目を集め続けた。つい最近にはエイズ啓発の催しに参加し元気な姿を見せていたという。それが誰も気が付かないうちにたった一人でこの世を去っていくことになるとは余りに寂しい。

 勿論直接お会いしたことはない。AVが嫌いなわけではないが彼女の作品は観たことがない。テレビの映像を通じて彼女を観ていただけだが、さっぱりして気取りのないその人柄はとても好感が持てた。苦労した十代、AV出演、そういう経歴を映像から感じることはなかった。ただテレビを観ながら時々感じることがあった。総じて能天気で陽気なキャラを演じていたが、本当のところは、すごく真面目で、嘘を吐くことができず、ズルく立ち回ることができない、そういう人なのだろうと。おそらくAV女優という過去が彼女にとって最後まで重荷だったと思う。人は嫉妬深い。彼女が成功し脚光を浴びるに連れて、「所詮アダルト出身」という心ない冷たい言葉や視線も増えていったに違いない。彼女はその程度のことではびくともしないなどというタフな女性ではなかった。深く傷つき自らの寿命を縮めることになった。

 芸能人は所詮商品だなどと分かった風な口を利く者がいる。しかしリストラ、派遣契約打ち切り、内定取り消しなどを見れば分かるとおり、会社員だって所詮は労働市場で売買される労働力商品に過ぎない。人間を含めてすべてを商品化するという代償を払って資本主義は発展して世界の富は増進した。現代社会では誰もが商品なのだ。ただ彼女のように商品価値が高い者と筆者のように商品価値が低い者がいるだけの話しに過ぎない。だから彼女の苦しみや悲しさは誰もが味わう苦しみであり悲しさなのだ。仏教では、愛する者と別れる苦しみ、憎しみを持つ者と出会わなくてはならない苦しみを8つの苦に数え入れる。まさに彼女はその短い人生において、この二つの苦に苛まれ続けた。しかし、それは全ての者が味わうことを余儀なくされる苦しみなのだ。

 だが現役時代の明るく弾けるような笑顔を思い浮かべるとき、彼女はただ苦しいだけの人生を過ごしたわけではないことに気が付く。苦しみのない人生などなく、楽しみのない人生もない。苦しいことも多かったが、彼女は短いが楽しい善い人生を歩んだのだ。だからこそ彼女は観る者に喜びと心の安らぎを与えることができた。ちょっぴり悔いが残っているかもしれないが今は極楽で楽しく過ごしている。そうだよね、飯島愛さん。さようなら。



(H20/12/25記)


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