「亀の甲より年の功」という諺は有名だが、どうやら真実は逆のようだ。 亀の特徴と言えば、何と言ってもあの硬い甲羅に尽きる。硬い甲羅は外敵や悪天候に対して鉄壁の防御となる。亀が長生きなのは色々な理由があるだろうが、外敵や悪天候で命を落としたり健康を害したりすることが少ないことが幸いしている(と思う)。 亀の甲羅は背側と腹側にある。11月27日付のネイチャー誌に掲載された化石を分析した中国科学院の論文を見ると、腹側の甲羅が先に進化して、その後に背側が進化したと記載されている。 これは、ちょっと不思議な気がする。敵から身を守るためには背中から甲羅ができる方が自然だと感じるからだ。背中が無防備では腹を幾ら堅固にしても防御には役立たず、腹が重くて動きにくいだけではないか。「年の功」という言葉が相応しい年齢になった筆者は論文の要約を読んですぐにこう考えた。 だが、亀は自然環境の悪化で数は減っているとは言え、広く世界に分布し大繁栄している。つまり自然環境に見事に適応しているわけだ。だとすると腹側から甲羅が発達したことには何か理に適った理由があると推測される。ところが「年の功」のはずの筆者には何も理由が思い浮かばない。 人は歳とって経験を積んでも自然の摂理を超えることはできない。亀の甲羅の方が人の年の功よりずっと賢いのだ。 ところで干支には亀がいない。元々干支は動物を意味するものではなく、後の世に分かりやすいように動物の名で呼ばれるようになったに過ぎない。だから亀がいなくても不思議でも何でもない。だが亀年があったら楽しいと思う。亀年の子供は長寿で目出度いと親族は喜ぶに違いない。少子化対策に亀年を新設したらどうだろう。いや、こんなことを言うから「年の功より亀の甲」になる。 了
|