☆ 頑張れ明治ラグビー部 ☆


 「横の早稲田、縦の明治」早稲田とともに日本のラグビーを支えてきた明治が苦しんでいる。帝京大に敗れ24年ぶりに大学選手権出場も逃した。

 早稲田の14回に次ぐ12回の大学選手権優勝。この数字は第3位の関東学院の6回を大きく凌ぎ、明治が早稲田とともに日本ラグビー界の中心にあったことが分かる。かつてラグビーがサッカーよりも人気があった70年代、80年代、その人気を支えたのが両校だった。毎年12月の第1日曜に開催されるラグビー早明戦は国立競技場を満員にし、前売り券を入手するためにファンが徹夜で行列したものだった。重量フォワード(FW)の縦突破の明治、軽量FWが耐えてバックス(BK)の横の展開で勝負する早稲田、両校の対照的なラグビースタイルも試合を大いに盛り上げ、ファンの喝采を浴びた。その後、Jリーグの発足でサッカー人気が高まると同時にラグビーの人気は落ち、今では早明戦も空席が目立つ。それでも早稲田と明治の人気は今でも高い。その明治が大学選手権の出場チームに名を連ねていないのは如何にも寂しい。

 80年代後半から90年代、早稲田ラグビー部は「横の早稲田」に拘り弱体化した。強力FWがセットプレイだけではなく縦横無人にグラウンドを走り回り、攻撃、防御ともにラインに入ってくる現代ラグビーでは従来の早稲田のスタイルでは対抗できない。FW戦で劣勢でも、サインプレイを多用するBKの横の展開とタックルで活路を見出すという早稲田の戦術は通用しなくなり、強力FWを擁する明治、大東、関東学院などライバル校に圧倒された。そして早稲田は遂に「横」への拘りを捨てた。9年前監督に就任した清宮(現サントリー監督)は強力FWを育てあげ早稲田を復活させ、監督就任5年間に3度の大学日本一を実現した。特に監督最後の2005年度には強力なスクラムとモールでライバルを圧倒、大学選手権決勝では関東学院のFWを粉砕して大会記録となる大差で勝利し、その勢いでトップリーグベスト4のトヨタまでも破った。常に戦術が進歩するスポーツ界において伝統だけに拘っていたのでは勝てない。

 だが早稲田の復活に歩を合わせるかのように今度は明治が弱体化する。明治は長年ラグビー部監督を続け日本ラグビー界の顔であった北島元監督がお亡くなりになってから低迷が始まる。北島監督の威光の下、明治は高校ラグビー界から最高の逸材を自由に集めることができた。しかし北島監督亡きあと、そうはいかなくなる。今春早稲田を卒業し現在サントリーでプレイをする日本代表プロップ畠山など北島監督時代ならば間違いなく明治に進学していた。日本代表あるいはそれに近い水準に位置する早稲田出身の選手たち、青木、矢富、今村、五郎丸、今年のキャプテン豊田なども一昔前ならば明治の紫紺のジャージに袖を通していたはずだ。結局明治が低迷している最大の原因は思うように選手が集められなくなったことにある。

 だが、それだけではない。かつて早稲田が通用しなくなった横の展開に拘り低迷したように、今の明治は他校のFWの大型化・強力化によりセットプレイで圧倒することなど不可能なのに、未だにスクラムで押すことばかりに拘っている。だからスクラムが劣勢になるともう打つ手がない。スクラムを圧倒された帝京戦などがその典型だ。早稲田を圧倒し今年度の大学日本一の最右翼と目される帝京が相手で端から劣勢が予想されたとは言え余りにも策がなさすぎた。このことはFW戦で劣勢ながら慶応が帝京と引き分けたことと比べればよく分かる。早稲田が横への拘りを捨てて復活したように、明治も縦への拘りを捨てて新しい柔軟なラグビースタイルを生み出す必要がある。

 栄枯盛衰、選手が毎年変わる大学スポーツで長くトップの座を維持することは難しい。特にラグビーは、一時期ほどの人気はないとは言え、大学スポーツ界では駅伝などに次ぐ人気種目で各校とも強化に熱心だから尚更だ。今年は早稲田から有力選手が抜け、関東学院も半年のブランク、春日前監督の退陣も手伝い一時期の圧倒的な強さがなりを潜めている。現時点の成績からすると、帝京と東海が大学日本一に一番近い位置にある。こうしてトップの座が次々と変わるのが学生スポーツの常なのだ。だがラグビーにおける明治の存在には特別なものがある。明治の強さがラグビー人気に直結すると言っても過言ではない。明治の姿が見えない今年の大学ラグビー選手権は多くの観客を集めることは難しい。明治ラグビーが復活する日を多くのラグビーファンが待ち望んでいる。数多の伝説を残してきた明治ラグビー部が新たな伝説を作り出す日が来ることを祈りたい。



(H20/11/18記)


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