☆ 改めて思う、清原の偉大さ ☆

井出薫

 レギュラーシーズンが終了した。セリーグの各部門の個人賞を眺めると横浜、ヤクルトの選手が目に付く。ぶっちぎりの最下位横浜、巨人にぼろ負けのヤクルト、観客動員数も低迷の両チームで賞をとった選手たちの活躍には拍手を送ろう。だが激しい優勝争いをしているチームに居て、チームの勝利優先、ここぞというときの勝負強さが求められる状況でも彼らはこれだけの成績を残せるだろうか。

 引退した清原はとうとう最後まで賞を取ることは一度としてなかった(新人王を除く)。だが全盛期の清原は滅法勝負強かった。そして何よりもチームが勝つことを喜んだ。個人成績などどうでもよく、勝負の大勢が決した場面でせこくヒットを狙いにいったりすることはなかった。どちらかと言うと点差が大きく開くと気が入らないバッティングが多かったように記憶する。なるほどこれではタイトルは獲得できない。だがファンが本当に求めているのは何だろう、記録か、違うチームの勝利に貢献するプレイ、観ている者の心を熱くするプレイだ。10点リードしている試合でこつこつとヒットを打ったり、盗塁をしたり、手堅くバントを決めても面白くも何ともない。大リーグでは、こういうときの盗塁は盗塁と認めてもらえず、球場は敵味方の隔てなく大ブーイングになる。チームの勝利のためのエキサイティングなプレイこそが求められている。イチローもヒット数よりもレーザビームと称されるホームへの返球こそが大リーグでは評価されていると聞く。

 清原、彼こそまさにファンが求めるものを知り、そしてそれを実行するプレイヤーだった。晩年は怪我に泣き不振続きだったが、それでもファンは最後まで離れなかった。引退してもなお、おそらく個人としては最もファンに親しまれている選手だろう。その点は元ヤクルトの古田も似ている。

 古田も清原も去った後、日本のプロ野球界に心を熱くしてくれる選手が残っているだろうか。記録などどうでもよい、チームが勝つこと、観客を喜ばせることこそ自分のプレイの目的だと心の底から信じ実践する選手の登場を心から望みたい。また監督にもお願いする。防御率のタイトルを取らせるために最終戦で打者1人だけに投げさせるなどというセコイ真似はいい加減にしてもらいたい。ヤクルトファンとして確かに石川のタイトル獲得は嬉しいが、ルイス(広島)が気の毒だ。ルイスの方が遥かにチームに貢献した。



(H20/10/13記)


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