☆ 空飛ぶ細菌 ☆


 雨や雪は大気中の微粒子に水蒸気が凝結して作られる。筆者は学生時代にこの微粒子は鉱物など無生物に由来すると習ったものだが、最近の研究によるとそうとは限らないらしい。細菌など空中を浮遊する微生物が核となって水蒸気が凝結して雨や雪になることが少なくないと言う。

 特に農産物など植物に害を与える細菌が凝結核となって雨や雪を作ることが多い。細菌は大気循環を使ってその生息圏を広げていくわけだ。人間には余りありがたいことではないが、まさに生命体と無機的自然環境の見事な調和が示されている。

 私たち人間も大気の浮力を利用する飛行機やヘリコプターという乗り物を発明して空を飛び世界の隅々にまで進出している。人間の発明品は細菌の浮遊よりも確実に目標地点へ到達するが、無機的自然環境と調和することで目的を達成していることに変わりはない。幾ら知的生命体などと威張ってみても人間とて自然環境の中で自然の摂理に従って生きていることでは細菌と変わるところはない。しかも人間の知的能力は自然環境との調和の下で展開された生物進化の賜物なのだ。

 私たちは地球という自然環境に心から感謝しなくてはならない。尤も、子供の頃、雨が降ると友達とふざけて口をあけて雨を飲み込んでいたものだが、農作物に被害を与える細菌を飲み込んでいたのかと思うと一寸ばかり背筋が寒くなる。自然に感謝しつつも用心を忘れてはいけないようだ。


(H20/5/8記)


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