☆ 適応できない ☆


 ホームページやブログを閲覧していると、最新情報を一番上に記しているページがほとんどであることに気がつく。そこで最近ホームページの「What’sNew!」を最新記事が上から順に並ぶようにレイアウト変更した。だがどうもしっくりこない。

 メールフォルダも最新メールが上になるように設定している人が多い。こちらもパソコンを買い替えた時に上から並ぶように設定変更したのだが、やはり座り心地が悪い。

 上から下へと情報が古くなっていく方がWEBには適している。モニターの解像度にもよるが、普通ページの上部しか表示されない。閲覧者が欲するのは最新情報だからそれを確実に見える場所に掲載するのは理に適っている。だが書籍や論文集では、上から下に行くほど情報が古くなっていくことはまずない。年表が上から下に年代を遡っていったらさぞかし読みにくいだろう。書籍ではマウスやキーボードを操作することなく全体を一望できるから、上部に最新情報を載せる必要はない。

 インターネットなどなかった時代の人間は上から下に時間が進んでいくような情報配列に慣れていた。筆者にはこれが遺伝子に刷り込まれているのか、WEBでも一番下に最新情報を持って行きたくなる。ところが他の人はWEBでは下から上に向かって情報が新しくなり、書籍や論文では上から下に向かって新しくなるという遣り方で何の問題もなく適応している。

 「書類をキングファイルに保存するとき一番新しいものを一番上に綴じるだろう。WEBとはキングファイルなのだ」とある人に指摘された。なるほどそうかと思いはした。確かにWEBのページはキングファイルに保存された資料の目次のような役目をしている。だが目次も下から順に書いていくことはないから、この説明では納得がいかない。

 適応できない者はどうしたら良いのだろう。いや別に何かができないわけではないし、WEBを閲覧するたびに順序関係を勘違いするわけでもない。だが違和感が付き纏うのだ。

 いつの日にか、書籍や論文もWEBと同じように下から上に向かって情報が新しくなり、年表も一番上に現在が配置されるようになるのだろうか。そうなれば適応性が悪い者でも慣れて上から下へと時間を遡ることが容易になるだろう。そう言えば、日本では昔、横書きは右から左へと書かれていた。それがいつの間にか左から右へと変わり誰もがそれに適応した。上下関係も同じ運命をたどる可能性はなくはない。

 だが左から右と右から左には大きな差はないが、上から下と下から上とでは大きな差があるように感じる。下から上へと読んでいくことはやはり人間には困難だろう。WEBで最新情報が一番上に配置されているとはいえ、内容自体は上から下に書かれている。下から文章を読んでいくことはおそらく人には非常に困難な作業になる。

 その一方で、WEBの情報配列の順序が変わることはない。そして大多数の者がそれに適応している。筆者はけっしてインターネットやパソコンに弱いとは思っていないが、その世界は必ずしも居心地が良いわけではない。現在課題となっている類のデジタルデバイドはいずれ解消されるだろうが、情報配列の順序に違和感を抱く者がいなくなる日はこないと予想する。将来はデジタルデバイドがこんな形で残るのかもしれない。別に深刻な問題ではないのだが。

(H19/12/11記)


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