☆ 楽観的で良い? ☆


 人間は楽観的だ。自分の能力を実際以上に高く評価して明るい未来を想像する。平均より健康で長生きできると信じ、仕事も結婚生活も上手くいくと予測する。何故だろう。

 11月1日のネイチャー誌に答えが載っていた。人間の脳は楽観的に考え行動するようにプログラムされているそうだ。なるほど先天的にそうなっていればすべて合点がいく。人間は様々な困難や不幸な出来事に遭遇しても簡単には挫けることはない。鬱になることもないし、なっても回復する。

 自然は危険に満ちている。悲観的な生物は心休まる時がない。だから、そういう生物種は環境に適応することができず淘汰されて消えていく。おそらく人間だけではなく現存する全ての生物は楽観的で、それは自然淘汰の過程で得られた共通の性質なのだろう。

 だが楽観的であることが良いとは限らない。人類を全滅させることができるほどの大量破壊兵器が存在し、環境破壊と資源の浪費で文明は危機に瀕している。一握りの者が巨万の富を独占している一方でその日の食糧さえ満足に手に入れることができない人が多数存在する。それなのに、すべてに楽観的な人間は、平和な世界の確立、環境保全、資源の効率的な使用、貧困の撲滅に真剣に取り組まず、呑気に目先の利益や快楽を追い求めている。人口が少なく人類の活動が地球にとって取るに足らないものでしかなかった時代はそれでも良かった。だが今はそうではない。

 人類のような巨大な文明を作る能力を持った生物種は、短期的な予測では楽観的、長期的な予測では悲観的であることが望ましい。そうなれば、日々を楽しく過ごすと同時に、平和、環境、資源、格差解消に真摯に取り組むようになるだろう。

 文明の発達が余りにも短期間に進んだので、人類の本能が自然淘汰により、このような方向に変化する時間的な余裕がなかったのだろう。だが自然の摂理がやがて人類の本能を好ましい方向に導き、現代が抱える数多くの難問を解決してくれるだろう。ただ、それまで人類が生き延びていればの話しだが。


(H19/11/6記)


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